──京都でも、今年1月に独立団体の会津小鉄会で分裂騒動が起きた。一定の統制が取れていた状況が崩れ始めているようにも見える。
鈴木:跡目争いがこじれた結果、2つの「七代目会津小鉄会」ができ、双方を六代目側と神戸側が支援する“代理戦争”となって本部事務所で両派の乱闘騒ぎまで起きました。
溝口:今、会津小鉄会の神戸派が苦しいのは、当てにしていた神戸山口組の勢力がほとんど任侠山口組に移ってしまったことですね。任侠山口組の織田代表は他団体と付き合わないことを公言していますから。これが稲川会や会津小鉄会といった他団体の分裂にも影響を及ぼしている。
鈴木:引き金を間接的に引いているのは、間違いなく3つの山口組です。
溝口:もともとヤクザは金の取り合いだから、火種はいくつでもある。山口組の分裂が後付けの理由になっているケースも多く、ひと言では片付けられない複雑な事情があるわけですが。
鈴木:九州の四社会(4団体の親睦団体)は、「六代目とも神戸とも付き合わない」という声明を出している。九州では、一般人を含め14人もの死者を出す抗争を行ない、しかも実行犯が捕まっていない事件も多い。彼らからすれば山口組の抗争は「何やってるんだ」という感じだと思います。
●溝口敦(みぞぐち・あつし)/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション大賞を受賞。『暴力団』『続・暴力団』(ともに新潮社)、『ヤクザ崩壊 侵食される六代目山口組』(講談社+α文庫)など著書多数。
●鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーライターへ。『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)など著書多数。『全員死刑』(小学館文庫)が11月に刊行予定。
※週刊ポスト2017年10月13・20日号