国内

認知症の人にとって旅はリハビリ 旅先で感謝されるのが好影響

NPO法人日本トラベルヘルパー協会代表理事の篠塚恭一さん

 私(53才・女)は父の急死以降、認知症の80代の母を支えている。介護の中で見えてきたのは、認知症患者にとって旅はよいリフレッシュになるということだ。旅行だけでなく、ちょっとした外出でも、頭がスッキリして気分が上向く。高齢者も同じだ。そんなニーズに応え、高齢や認知症になっても旅行や外出ができるよう、さまざまなサービスが登場している。

 20年前から、介護と旅行の技術を併せ持つトラベルヘルパーを育成し、高齢者や障害者の旅行・外出を支援するNPO法人日本トラベルヘルパー協会代表理事の篠塚恭一さんに“おでかけ”の大切さを聞いた。

「高齢者がたの多くは、温泉や観光に行きたい、お墓参りや孫に会いに出かけたい。でも実際には行けない、行かない。その最大の理由は、“人に迷惑をかけたくない”ということなのです」

 それは長年、旅行業界で旅の楽しさを提供してきた篠塚さんが、年齢で躊躇することなく旅を楽しんでもらいたいと、高齢者を対象とした旅のニーズを探る中で切実に感じた“現実”だったという。

「特に要介護のかたがたは、少なからず“世話をしてもらって申し訳ない”という気持ちがあるようです。受け身でいることに慣れているのです。でも、旅人になれば環境は一変します。コーヒー1杯飲んでも、お土産を買っても“ありがとう”と感謝され、宿では“ようこそいらっしゃいました”と歓迎される。小さな交流にも“生きていてよかった”と感激されるのです。初めての風景、食べ物、人との出会いに五感すべてが刺激される体験。これは外に出ないと得られません」

 ひとりで飲食店に行けなくなった母もそうだ。私と2人で喫茶店に行き、店員さんが「ありがとうございました」と言うと、母は振り返って「また来るわね」と必ず返す。家族やヘルパーさんではない他人と会話することが、母には貴重で素敵な体験なのだ。知らぬ間に狭くなっていた母の日常に気づかされる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン