ただ、いくら五社に惚れ抜き、たとえ役に成りきっていたとしても、撮影現場では多くのスタッフの前で、そして最終的には無数の観客に対し、裸になって男と身体を重ねる様を見せるのは、どんな女優でも照れや恥ずかしさが生じるものだ。

 そこにも、五社は繊細な気遣いをしていた。五社の演技指導は口で細かく指示を出すのではなく、まず自ら演じて手本を見せるというものだった。それは、濡れ場においても同じ、いやそれ以上に熱を帯びたものになっていた。

 五社は助監督を相手に濡れ場を演じてみせた。まず自身が女の役になって、裸になり助監督に攻めさせ、それに対してどう反応した芝居をするのかを見せていったのだ。その上で今度は助監督を女優に見立て、男側の動きをしてみせる。

 監督が自ら裸になって助監督相手に濡れ場を演じる。それは「こう演じればいい」という見本になるのと同時に、監督が率先して「恥ずかしい」姿を見せたことで、女優たちは自らの羞恥心を捨てることができ、堂々と濡れ場を演じられたのだ。

◆五社の演出を理解した優秀なスタッフが支えていた

 そして、五社がこうした演技指導に集中できたのは、映像面に関してカメラマンの森田富士郎に全幅の信頼を置いていたからに他ならない。森田は、『鬼龍院』以降の全ての五社作品の撮影を担ってきたが、五社の現場での熱のこもった演技指導から瞬時の判断で映像に組み立てていく。

 たとえば、『櫂(かい)』での緒形拳と真行寺君枝の縁側での濡れ場。ここでは、五社の演出を受けた緒形が大熱演をみせ、絡み合った男女が縁側からはみ出して地面に届きそうになる。

関連記事

トピックス

高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年、第27回参議委員議員選挙で使用した日本維新の会のポスター(時事通信フォト)
《本当に許せません》維新議員の”国保逃れ”疑惑で「日本維新の会」に広がる怒りの声「身を切る改革って自分たちの身じゃなかったってこと」
NEWSポストセブン
防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
寮内の暴力事案は裁判沙汰に
《広陵高校暴力問題》いまだ校長、前監督からの謝罪はなく被害生徒の父は「同じような事件の再発」を危惧 第三者委の調査はこれからで学校側は「個別の質問には対応しない」と回答
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン