今年1月に無事寛解した彼女だが、一度ほつれた糸が修復することはなく、夫は家を出て別居している。
夫に捨てられる女性が増加している要因は、がんに罹患する年齢の男女差が関係しているといわれている。50代までは女性の方ががんを発症している人数が多いのだ。離婚カウンセラーの岡野あつこさんが語る。
「50代前というと、男性はまだ仕事も現役。ある程度の地位もあり、人によっては最も多忙な時期です。そこに妻のがん闘病が重なると、全ての力を看病に注ぐことは難しい。公私に挟まれた結果、心身が疲弊して“逃げ場”を求めてしまうケースが多いんです」
元国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長で、グランドハイメディック倶楽部理事の森山紀之さんは“男性心理の弱さ”を指摘する。
「人生において生理や出産などを経験する女性と比べ、体が変化する機会が少ない男性は、重大病に相対した時に精神的なもろさが出る。とりわけがんの場合は、『恐ろしい病気』というイメージだけでパニックになりがち。がんを直視できず、がんを正面から受け止めない傾向があるんです」
本誌・女性セブンは既婚男女各100人を対象に、「夫/妻ががんになったら、支え続ける自信はありますか?」というアンケートを実施。すると、「自信がある」と答えた女性が65%だったのに対し、男性は75%。アンケート上では、男性の方が妻の看病に対し、積極的だという結果が出た。
しかし、この結果はあくまで「もしも」という仮定での話。前述の通り、現実に「妻のがん」という事実を突きつけられた時、その重みを受け止めきれない男性は少なくない。前出の田中さんも自身の体験をこう振り返る。
「別れた夫は私が病気になる前は、“どんなことがあってもきみを守るよ”とか歯の浮くような言葉ばかり口にしていました。だから私もがんを告知された時は、ショックでしたが、“夫がいるから大丈夫”と言い聞かせていました。でも、闘病が進むうちに、夫は豹変していって…。病気や浮気もつらかったですが、それ以上に、変わっていく夫の姿を目の当たりにすることが、精神的にきつかったですね」
※女性セブン2017年10月26日号