「彼は事故の直前、中井パーキングエリア(神奈川県足柄上郡)で嘉久さん一家とトラブルを起こしていた。出口付近に駐車し、車の往来をふさいでいた石橋容疑者に対し、嘉久さんは通り際に注意したそうです。これに激昂した石橋容疑者は、以後1.4kmにわたって嘉久さんの車を執拗に追跡し、蛇行しながら邪魔をし続けていた」(全国紙記者)
事故後、石橋容疑者は警察の任意の取り調べに対して、「向こうにあおられて、パッシングされたため停車した」と証言していた。だが神奈川県警は現場を通行していた260台以上の車を割り出し、目撃情報とドライブレコーダーの映像を収集。石橋容疑者の証言には偽りがあり、彼の行動によって事故が起きたとして逮捕に踏み切ったのだった。
「嘉久さん夫婦が亡くなった直接の要因は追突したトラックにあり、63才の運転手が過失運転致死罪で逮捕されています。一方で警察は収集した証拠から石橋容疑者が“事故が起きる状況をつくった”として、罪を問えると判断したのです」(前出・全国紙記者)
警察を動かした最大の要因は、生き残った嘉久さんの長女・A子さんの証言だった。A子さんは事故が起きた直後、車内から友人に電話をかけ、現場の状況を克明に説明していたのだ。A子さんから電話を受けた友人の父親が語る。
「息子が電話を受けたのですが、泣いていてただ事ではないというので、私が代わりました。『お母さんが運転していて、何度進路を変えても前を塞がれて、最後は止められちゃった』と。男には『全員降りろ』と言われたそうですが、恐怖のあまり、妹と一緒に車の中でずっと泣いていたようです。嘉久さん夫妻が車を降りた直後にドーンと後ろから強い衝撃があって、思わず目をつむってしまい、気づいた時には両親の姿が消えていたと言っていました。
緊急の事態だと直感でわかったので、とにかく車外に出ないこと、電話を切らずにこのままにしておくことを伝えました。A子さんは私の言うことには冷静に対応していました」
彼はA子さんとのやりとりをその場で携帯にメモしており、そこには事故現場の状況が克明に書かれていた。事故後にTBSの取材に答えたA子さんは、石橋容疑者から、「けんか売ってんのか」「高速道路にお前を投げてやろうか」などと恫喝されていたことを明かし、「殺されるかと思った」と証言している。文子さんが語る。
「A子は本当に強い子で、小さい頃から人前では絶対泣かなかった。それが、カメラの前で大粒の涙を流して…。もう見ていられませんでした。A子は警察にも同じ証言をしてそれがきっかけで捜査が動いた。あの娘の強さが、真実の解明を導いたのです」
※女性セブン2017年11月2日号