ストーリーは……20才の女子大生・赤間杏里(飯豊まりえ)はパパ活サイトを利用するフランス文学専攻の大学教諭・栗山航(渡部篤郎)と知り合う。デートするだけで金銭援助してもらえると一歩踏み出す。
このドラマの見所は、刻々と変化していく二人の間の微妙な距離感にある。当初20才の杏里にとっては「まじウザいんですけど」「ちょーキモ」、つまり小遣い稼ぎの相手としてしか見ていなかった栗山。しかし、娘を事故で失った、寂しげでどこか空虚な栗山の姿に、杏里の心は微妙に揺れ始め、二人の距離が変化していく…。
20才の女の子が中年オジサンに心を奪われる? 筋立てはある意味、現実離れしている。「男のご都合主義的幻想」と言われても仕方ない。
若い駆け出しの女優にとっては難しい役でもある。そんな「杏里」役に、体当たりで臨む飯豊さん。ベットシーンもあり汚れ役とも言えるのに、どこか透明感があって魅力的。まるで水を得た魚のように瑞々しく躍動しています。
実は、奇しくもこの時期、「自然体の演技」と好評を得るもう一人の「新人」が。『陸王』(TBS系日曜21:00)に出演中の作家・エッセイスト、阿川佐和子さんです。
老舗足袋業者「こはぜ屋」の縫製課リーダーという重要な役でレギュラー出演、その演技については「“意外な”女優力 」「とっても魅力的」「日に日に演技力に磨きがかかっている」「自然体でうまい」と大評判。
しかし、本当に「魅力的な自然体」の演技? セリフを言おう言おうという意識が透けて見えてしまう。相手の言葉を受けとって一拍置いてから言葉を発する余裕がなく、前のめり。もちろん、「素人」だから当たり前のことでしょう。阿川さんを否定するのではなくて、「自然に演技することの難しさ」がよくわかる、ということ。
「普通に見える」とは、「普通」という演技をしている、ということであって、それは簡単なことではない。秋ドラマを通して「自然体」の演技について考える時、『パパ活』の飯豊さんと『陸王』の阿川さんの両演技を比較対照してみるのも、なかなか味わい深いものがあります。