何も決断できずツイッターで小学生並みの罵詈雑言を吐くだけのトランプや、アメリカ任せで壊れたレコードのように「圧力強化」を繰り返すだけの安倍晋三は言うに及ばず、このサッチャーの言葉は「戦争反対」「憲法9条死守」を唱えるだけの護憲派にも鋭い批判となっている。同じインタビューでサッチャーはこうも語っている。
「平和は貴いものです。しかし、自由はもっと貴いのです。独裁の中での平和よりも混乱の中での自由の方がはるかに人間的であると私は思います。その自由のシステムが存亡の危機にあるとき、自由を愛し、自由の恩恵に浴している人間は立ち上がらねばなりません」
しかし、大義がある戦争だからといって、サッチャーが現地に派遣された兵士たちの犠牲や痛みを軽視したわけではなかった。当時、彼女は毎朝報告される若い兵士たちの死者、負傷者数に衝撃を受け、心の大きな負担となっていた。しかしそれでも決断を翻すことなく、人前では冷静かつ毅然と振る舞い、本国から遠く離れたフォークランド紛争でイギリスを勝利へと導いた。
自衛隊を南スーダンPKOに派遣した民主党政権時代の菅直人首相や、その後、内戦状態に陥ったにもかかわらず派遣期間を延長した安倍政権のいったい誰が自衛隊員の「戦死」を覚悟し、彼らの心の痛みを理解しようとしただろうか。
※SAPIO2017年11・12月号