もう一人、光っている生徒が高橋克実演じている55才の権田。チェリートくんと同じ大手銀行の上司、国際部部長。これまたトップエリート+金持ち。ということで、若い女をはべらせているモテ男と思いきや、実は恋愛遍歴ゼロと露呈しオトナ高校へ強制入学。それまで“モテ男”ぶり偽装していたことから、ついたあだ名は「サショー」。これまた辛辣。
……という役者たちの頑張りのみならず、虚構と現実を重ねあわせたパロディ構造をなす脚本に、ダンスあり歌あり細部まで凝った演出が効いています。ドラマの基本である「役者」、「脚本」、「演出」、その3本柱が実に均整がとれていて、シュールな笑いの世界が創り出されているのです。
海外ドラマでは『デスパレートな妻たち』から『Mr.ビーン』まで名作と呼ぶにふさわしいコメディが多々生まれてきましたが、なぜか日本ではコメディドラマの秀作はなかなか生まれにくく、とかく子供っぽいドタバタ劇に陥りがち。オトナがついついほくそ笑む、秀逸なパロディがなかなか見られなかった。
でも、日本の文化風土にパロディ作品が合わない、なんてことはないはず。振り返れば江戸時代に生まれた歌舞伎や落語だって、かなりの部分が反骨パロディ風刺劇。かつてはお上の規制があって生々しい事件や権力者批判などを直接的には描けなかったため、江戸の戯作者たちは実際の出来事を架空の物語に置き換えて、あたかも勧善懲悪をやっているようでいて風刺や批判を上手に織り込み笑い飛ばしてきた。庶民のガス抜き的娯楽であり、毒のある笑いが人気だったはずです。
そうした笑いの文化が脈脈とあるのですから、21世紀の今、秀逸なパロディやコメディドラマが作れないはずがないわけで、『オトナ高校』の成果を大いに讃えたい。そして、願わくば続けてこうした秀逸なドラマが生まれてくることを期待したいものです。
と書いていたら、ダンサーの菅原小春さんとの交際を報じられていた三浦春馬さんが破局、との報道。もしかしたら、恋の痛手という負のエネルギーを、このドラマに叩きつけている? そんな勝手な想像を刺激するほどに、三浦さんが弾けて輝いています。エネルギッシュで小気味良い演技を見せてくれています。