こうした“出向組”は外交部の人間より権力を持ち、独自の情報活動を進める。“出向組”は意外な組織にも潜んでいる。
「国家安全部や人民解放軍からの出向者は、人民日報や新華社など、日本に支局を置く多くの中国メディアに潜り込んで働いています。記事を書く者も、メディアの仕事をまったくしない者もいます」(中国メディアに詳しいジャーナリスト)
彼らはメディア関係者として様々な立場の日本人と会って情報を収集する。防衛省のインテリジェンス担当者が身分を偽ってNHKの北京支局に勤務するような“禁じ手”だが、これが現実なのだ。情報史研究家の柏原竜一氏は言う。
「中国は情報活動の重点をプロパガンダに移している。世界中で進める中国の拠点づくりや日本での土地買い占めなど、長期に及ぶ“侵略”を正当化するための宣伝工作に注力しています。それに対して日本はあまりに無防備。このままでは日本を含め、世界は中国のものになるでしょう」
もはや隠されることもなくなった「中国の野望」を直視しなければならない。
※SAPIO2017年11・12月号