ライフ

83才女性が新聞手にトイレで1時間 便秘とは無縁と自慢

活字が便秘予防の特効薬になることも…(写真/アフロ)

 痴呆の母を突然介護することになったN記者。

 介護の最中に、よく耳にするのは、高齢者の便秘問題だ。しかし、本誌・女性セブンN記者(53才・女性)の母(83才)はその悩みとは無縁のよう。なぜか…? それには独自のテクニックがあるのだという。

 * * *
 母の趣味は読書である。私が物心ついた頃には、家中の壁が本で埋め尽くされ、父の帰宅を待つ間や、寝床で眠気に負けるまで…と、ちょっとした時間を見つけては、母は本を読みふけっていた。

『日本の文学』『フォークナー全集』『ヘッセ著作集』など全集ものが揃い、寺田寅彦や串田孫一、開高健が大好き。私が大学生のころ、林真理子の『ルンルンを買っておうちに帰ろう』をいち早く入手し、「この人は大物よ」と、豪語していたことを思い出す。

 若い頃、熱心に読んだ本の世界は認知症になってもしっかり残っているようで、先日も来年のNHK大河ドラマ『西郷どん』の原作本で話題の林真理子の講演会に行き、「真理子さん、やっぱりご活躍ね」と、自分の読みが正しかったことに満足げだった。

 そして毎年末の家族の恒例行事になっている『第九』コンサートでは、母の文学名言も恒例行事。演奏のクライマックスの第4楽章まであまり出番のない打楽器の人たちが、約1時間、舞台上でじっと出番を待つ表情が面白くて、クラシック門外漢の私たちはつい、そこに注目してしまう。そして必ず、母は言うのだ。

「昔、寺田寅彦という人も、“オーケストラの中で太鼓を打つ人はどうも務め映えがしない”なんて言ったのよ」

 確かに『柿の種』という著作の中にそんなくだりがある。スマホ世代の私の娘は、毎年それを聞いて祖母へのリスペクトを深めているのだ。母は本だけではなく、ファッション誌、週刊誌、旅行誌と何でも読む。もちろん新聞も。つまり活字が好きなのだ。

 この気持ちはわかる。活字を追ううち、頭の中に描いた世界に引き込まれる興奮、高揚、夢見心地。テレビや映画、ネット動画にはない醍醐味だ。母が雑誌を読むのは、昔からお風呂。お湯に浸つかりながらじっくり読むので、雑誌は倍くらいに膨む。新聞はトイレ。新聞を持って入ると1時間は出てこない。

「トイレ、落ち着くのよ~。ここで新聞を隅から隅まで読むときが最高に幸せ」とは、若い頃の母。おかげで便秘に悩まされたことがないというのが、母の自慢である。

 独居になってもこの習慣は変わらない。認知症が進み、読んだ内容はすぐ忘れてしまうけれど、今もサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の母の部屋にある雑誌や文庫本は、相変わらず膨らんでいる。

 そしてもう1つ、昔から変わらないのは、書店や図書館で本に囲まれるととたんにトイレに行きたくなること。この妙なクセ、本好きの人の間ではわりとよく聞く話だ。

 通院などの外出時には、できるだけ書店に寄るのだが、新刊コーナーを歩いただけで、
「トイレどこかしら? ちょっと行って来てから、ゆっくり見るからね」と、声が弾む。

 ズラリと並んだ本の表紙や紙のにおいが、ワクワクのスイッチを入れるのだろう。母がいまだに便秘に悩まされないのは、このおかげかも。

 いつまでも、このスイッチが入りますように…。

※女性セブン2017年11月30日・12月7日号

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン