芸能

視聴者を裏切らないテレ東 「カネはないがプライドはある」

『池の水ぜんぶ抜く』が大河超えなどテレ東躍進の秘密(公式HPより)

『家、ついて行ってイイですか?』、『YOUは何しに日本へ?』『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』など、オリジナリティーあふれる番組を数多く放送するテレビ東京が勢いに乗っている。

 今年6月には、週間平均視聴率(5月29日~6月4日)でテレビ朝日、フジテレビを抜き、民放3位となり、開局以来初の快挙を達成。行政や自治体から依頼を受け、池の水を全部抜き、そこに何が潜んでいるのか調査するというドキュメントバラエティー『池の水ぜんぶ抜く』(放送は不定期)が9月3日放送で11.8%の高視聴率を叩き出し、11月26日の放送でも12.8%を記録。2回連続で同時間帯に放送されていた、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』を抜き、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)に次ぐ2位となった。

 かつて“最下位”が定位置だったテレビ東京は最強の“弱者”と生まれ変わった。

 テレビ東京の前身は、日本科学技術振興財団テレビ局として授業放送をメインに行う教育番組専門局として1964年にスタート。慢性的な赤字体質のため、1969年に日本経済新聞社が経営参画したが、その後も視聴率は低迷を続けた。キー局で4位となった民放局からは「振り向けばテレ東」と揶揄されるほどだった。

 そんなテレ東が最強の“弱者”となったのはなぜか。テレビ東京で常務を務め、著書に『テレビ番外地 東京12チャンネルの奇跡』(新潮社刊)がある石光勝さんはこう言う。

「テレビ東京が生まれ変わったわけではない。昔から実践していることを続けているだけ。テレ東は、カネなし、モノなし、ヒトなしのないものづくしの局だったため、足を使い、知恵を出し、他局と同じことは絶対にやらないというプライドだけはあった。それがテレ東の流儀です」

 こんな気風から『開運!なんでも鑑定団』、『出没!アド街ック天国』、『ASAYAN』などが生まれた。

 番組編成も独自路線だ。大事件が発生し、他局がロケ隊を投入して報道特番の生放送に切り替えても、テレ東だけは「アニメの時間ならアニメ」と編成を変えないスタンスを貫く。

 1991年の湾岸戦争時、他局がこぞって報道番組を流す中、アニメ『楽しいムーミン一家』、『三つ目がとおる』を放送し、18%近い高視聴率を叩き出したことは伝説となっている。上智大学教授(メディア文化論)の碓井広義さんはこう話す。

「生中継はお金がかかるというのもあるが、何が起こっても通常の番組を続ける頑固さがある。通常番組を楽しみに待っている視聴者を裏切らないのがテレ東の考え方です」

 ドラマも個性的だ。テレビ評論家の吉田潮さんが指摘する。

「遠藤憲一、松重豊ら脇役ばかりがシェアハウスで暮らす『バイプレイヤーズ』など、他局なら“スポンサーがつかない”と却下されるドラマに果敢に挑戦しています。横並びで同じような出演者のドラマが多いなか、テレ東ドラマは刺激的です」

※女性セブン2017年12月14日号

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト