彼らは自宅の半径20km圏内だけで行動し、社会人になっても中学・高校時代の友人や仲間が交友関係の中心で、その人たちにしか関心がない。そういう内向きな生態系がスマートフォン、SNS、ネット通販の利用が広がったことによってさらに縮小する方向に進み、出不精な若者が増殖していると推察されるのだ。
そもそも日本は世代による世界観の違いが顕著な国である。アメリカの場合はグローバルで外向き・上向き・前向きなニューヨークやボストンなどの東海岸、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトルにかけての西海岸と、ドメスティックで内向き・下向き・後ろ向きな内陸部で、地域による世界観の分断が起きているが、日本の場合は世代によって世界観に極めて大きな差があるのだ。
すでにリタイアしている団塊の世代やそれ以上の私も含めた世代は、小田実氏の著書『何でも見てやろう』(1961年)や小澤征爾氏の著書『ボクの音楽武者修行』(1962年)などを読んで海外旅行に憧れた。子供の頃には、小学校の校内放送でNHKラジオの『マイクの旅』(1949~1971年/マイクさんが日本全国を巡り、各地の文化、習慣、産業、自然などを紹介した番組)を聞き、自分も行ってみたいと胸を膨らませた。
私がとくに憧れたのはアメリカだ。『パパは何でも知っている』(日本放映1958~1964年)や『うちのママは世界一』(同1959~1963年)といったアメリカのホームドラマを見て「アメリカ人はあんなに広い家に住んで大きい車に乗っているんだ」と驚き、「行ってみたいな、よその国」と鼻歌まじりに思ったものである。
その後、映画『イージー・ライダー』(日本公開1970年)のような反体制を描く暗いイメージが入ってきて、ベトナム戦争や東西冷戦の緊張などでアメリカの負の部分にスポットが当たりがちになっていったが、それでも基本的に私たちの世代は、いつかは日本もアメリカのように豊かな国になりたいと思っていた。