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【平山周吉氏選】2018年に読みたい「『事実』を見抜く力」

有馬哲夫・著『こうして歴史問題は捏造される』

 年末年始はじっくりと本を読む良いチャンス。『週刊ポスト』の書評委員が選ぶ書は何か? 雑文家の平山周吉氏は、「『事実』を見抜く力」を養う本として、『こうして歴史問題は捏造される』(有馬哲夫・著/新潮新書/800円+税)を推す。平山氏が同書について解説する。

 * * *
 いまや大新聞からネット言論、Twitterの発信まで、すべての情報が等価に享受されるようになった。ありがたいご時世になったものだ。「等価」というのは褒めているわけではない。どれもが同レベルの悪貨が溢れる、「トンデモな言語空間」に堕してしまった事態に呆然となるのだ。

 事実の確定は隅に置かれ、声のデカい言論が幅を利かせる。えげつないオピニオンが喝采される。誰もが勝利宣言をしている。不都合があったら、だんまりをきめ込めばいい。「正しい」言論人に簡単になりすませる時代がやってきた。このめくるめく世界をどうやって生き抜くか。なまじのメディアリテラシーを磨く程度ではとても追いつかない。思い切って愚直な基本に戻るしかないのではないか。

 有馬哲夫の『こうして歴史問題は捏造される』は慰安婦、南京、原爆などの歴史認識問題のゴタゴタをすっきり整理し、「事実」とは何かを教えてくれる、歴史問題だけでなく、広く応用のきく実用書である。かつては信頼度の高かったNHKの番組や朝日新聞の記事を俎上に載せて、大メディアの劣化の実情が暴かれる。

 長年アメリカで公開された公文書資料発掘に携わってきた著者の方法は、「反証可能」な「一次資料」によって議論が組み立てられているかどうかを見抜くことだ。それなら左右のイデオロギーとは関係なく、判断できる。

 例えば、国連人権委員会のクマラスワミ報告書である。5W1Hのない、信用できるかどうか検証しようのない証言が堂々と採用されている。「反証可能性のない」言いっぱなし証言で構成されているのだ。文句なく、落第である。「国連」とか「人権」といった美名は、ここでは隠れ蓑にならないのだ。

「無理に結論を引き出さない」ことも大事だと著者は言う。そんなまどろっこしいことには耐えられないからの捏造大流行である。事実か否か、ひと呼吸判断を遅らせる冷静さが有効だろう。

※週刊ポスト2018年1月1・5日号

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