芸能

中山美穂と高岡早紀が姉妹演じるNHK『平成細雪』の見所

NHK公式HPより

 ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏も注目する作品が明日、スタートする。文豪の原作を大胆に翻案した意欲作。山下氏が見所について言及した。

 * * * 
 新しい年が明け、お屠蘇をいただき初詣へ。1年のうちこの時期だけは、和の暮らしの優雅なひとときを味わった方も多いはず。まだ松の内だし、殺伐とした浮世には戻りたくない……という気分の方にオススメできそうなドラマがあります。

『平成細雪』(日曜午後10時 NHK・BS 1月7日スタート全4回)。タイトルからおわかりのように、谷崎潤一郎の大作『細雪』が土台となっている新ドラマ。映像化されるのは市川崑監督の映画以来、なんと35年ぶりというから注目です。しかも谷崎「没後50年・生誕130年」メモリアルイヤーに新全集が編まれ刊行完了したこのタイミング。NHKがどのようにドラマとして描くのか、ワクワクします。

 主人公は大阪・船場の名家・蒔岡家の女たち。これまで日本を代表する名女優たちが度々演じてきた4姉妹を、今回は中山美穂、高岡早紀、伊藤歩、中村ゆりが担当します。

『細雪』と聞いて、まずみなさんは何を思い浮かべるでしょうか? おそらく4人姉妹がずらりと並ぶ、あでやかな着物姿、ではないでしょうか?

 小説に描かれているのは斜陽化し没落していく名商家の、しかし優雅な暮らし。桜に彩られた京都・平安神宮を着物姿でそぞろ歩く姉妹。蛍狩りやお花見お月見と、雅な遊びに興じる姿。お見合い、本家と分家のいざこざ、「御寮人(ごりょん)さん」など大阪豪商の一部が使っていた独特の船場言葉……。一見何とも、まったりとした世界です。

 しかし、谷崎がこの作品を書いた時の環境は、実は「まったり」とは真逆。執筆の大半が「疎開先」で行われました。第二次世界大戦のさなか、戦局が悪化し国家総動員法の下に一億総火の玉になりつつあった時代。昭和18年、雑誌『中央公論』で連載が始まりました。

 ところが軍部からその耽美的な作風を「戦時にそぐわない」と批判され、掲載禁止に。版元の中央公論も廃業に追い込まれ、その後発表のメドも立たなくなる。当局の追及は厳しく、原稿を書き上げても印刷すらできず。

 それでも谷崎は、敢えて書き続けたのです。空襲、原爆投下、焼け野原になっていく中で、いったい何を思いながら「豪華絢爛4姉妹の暮らし風景」を描き続けたのでしょうか? そこを考えずには、『細雪』の世界の謎は解けません。

 船場の豪商という上方文化の崩壊。斜陽化していくものへの挽歌。滅びの美、喪失の嘆き、哀惜。

 全巻が刊行されたのは昭和22年。敗戦後の人々は、「豪華絢爛の着物をまとった4姉妹の姿」をむさぼるようにして読んだのでしょう。自分たちが失なったものを想いながら。破壊され失われた〈美しい日本〉は、心に染み入るような強烈な色彩と力を持っていたことでしょう……。

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン