国内

還暦のオバ記者 客室清掃始め日々少しずつ“できる女”に

還暦記者が客室清掃業体験の苦労を語る

 アラカンから先、どうやって生きていこうか。お金の心配はもちろんのこと、生きている限り、毎日の営みとして仕事がしたい。女性セブンの“オバ記者”こと野原広子(60才)はそう思い立ち上がる。

 * * *
 折しも、大手不動産会社で営業をしていたМ子(60才)は、マンションの清掃を含む“管理人”を始め、ダンス教師のK美(59才)は深夜の食品工場にパートに出た。そして私は、以前に経験があるホテルの客室清掃を始め、そこでいろんな国のいろんなおばちゃんを知ることになる。

 朝の事務所でパートの名簿を見ると、「田中」「吉田」「長谷川」と日本名が並んでいるけど、見た目も話し方も外国人。日本人男性と結婚して、日本名になったのね。それにしても、全体の6割が外国人の職場で働くのは初めてだ。

 初日、韓国人にイヤミを言われ、それで反撃しなかった私は“弱い”と見込まれ、コロンビア人が小さなミスを見つけて襲いかかってきた…。でも、日を重ねるごとに刻々と事情が変わってきたの。

「コロンビア、フィリピン、中国、韓国、ベトナム、ミャンマー、ネパール。この前までロシアの人もいたね」

 そう教えてくれたのは指導係の中国人の田中さん(40代半ば)だ。その彼女がまた、いわくつきの人で…。

「田中さんとは絶対に同じフロアで仕事したくない、と言う人が多いんだけど…。どうしてもダメなら変えますから」と責任者のWさん(男性・60代)から言われたの。

 田中さんは、掃除道具が入ったカゴと補充するアメニティーをギッシリ詰めたカゴを両手で持って大股で客室に入っていくと、「私、やって教え(てあげ)る」と切り口上。そしてひと通り終わると、「じゃ、やってみて」。

 私に浴槽を洗わせてすぐ、「そうじゃないでしょ。私、そうやれって言ってないよ」と畳みかける。これを日に7~8回。客室清掃はほとんどが中腰か腰を折っての作業で、4時間以上ぶっ続けだ。後半は膝と腰がガクガクで、立ち上がるのも容易じゃなくなる。そのタイミンでやり直しを言われてごらんなさいな。いいも悪いもない。

「うるせーっ。こっちはいっぱい いっぱいなんだよ」

 声にこそ出さないけど、腹の中は煮えくり返ってくる。

「肉体労働はすばらしい」なんて言っていた自分が、どれだけ甘くてアホだったか思い知らされたわ。

 その田中さんが、2日目だか3日目だかに、ぶっきらぼうにダメ出しをした後で、「細かくてごめんね」って小さな声で言うんだわ。

「えっ?」
「私、細かいから」

 照れくさそうに笑うのを見たら、「いえいえ、教えてくれてありがとうございます」とふいに体を2つに折っていた私。実際、自分でやってみると、この道8年の田中さんの仕事ぶりは見事としかいいようがないの。流れるようにシーツを扱い、あっという間にベッドを作っていく。

 ひと息で浴槽を完璧に洗い上げる技は、手本を見せられたってすぐにできるもんじゃない。翌朝、始業時間より30分早く出勤して、その道すがら「あそこをこうして…」と、田中さんの動きを思い出したりして。

 こうして日々、少しずつ“できる女”に近づいていく自分って、なんかいいんだよね。

 とはいえ、60才まで“座ったまんま10時間パソコン”のライターが、そう簡単に動ける女になれるはずもなく、一難去ってまた一難――。続きはまた後の機会に。

※女性セブン2018年2月1日号

関連記事

トピックス

試練を迎えた大谷翔平と真美子夫人 (写真/共同通信社)
《大谷翔平、結婚2年目の試練》信頼する代理人が提訴され強いショックを受けた真美子さん 育児に戸惑いチームの夫人会も不参加で孤独感 
女性セブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン
ヒロイン・のぶ(今田美桜)の妹・蘭子を演じる河合優実(時事通信フォト)
『あんぱん』蘭子を演じる河合優実が放つ“凄まじい色気” 「生々しく、圧倒された」と共演者も惹き込まれる〈いよいよクライマックス〉
週刊ポスト
石橋貴明の現在(2025年8月)
《ホッソリ姿の現在》石橋貴明(63)が前向きにがん闘病…『細かすぎて』放送見送りのウラで周囲が感じた“復帰意欲”
NEWSポストセブン
決死の議会解散となった田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
「市長派が7人受からないとチェックメイト」決死の議会解散で伊東市長・田久保氏が狙う“生き残りルート” 一部の支援者は”田久保離れ”「『参政党に相談しよう』と言い出す人も」
NEWSポストセブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
「ずっと覚えているんだろうなって…」坂口健太郎と熱愛発覚の永野芽郁、かつて匂わせていた“ゼロ距離”ムーブ
NEWSポストセブン
新潟県小千谷市を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA) 
《初めての新潟でスマイル》愛子さま、新潟県中越地震の被災地を訪問 癒やしの笑顔で住民と交流、熱心に防災を学ぶお姿も 
女性セブン
羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ騒動が起きていた(写真/アフロ)
【スクープ】羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ告発騒動 “恩人”による公演スタッフへの“強い当たり”が問題に 主催する日テレが調査を実施 
女性セブン
自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏(時事通信フォト)
《自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏》政治と距離を置いてきた妻・滝川クリステルの変化、服装に込められた“首相夫人”への思い 
女性セブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
《初共演で懐いて》坂口健太郎と永野芽郁、ふたりで“グラスを重ねた夜”に…「めい」「けん兄」と呼び合う関係に見られた変化
NEWSポストセブン
千葉県警察本部庁舎(時事通信フォト)
刑務所内で同部屋の受刑者を殺害した無期懲役囚 有罪判決受けた性的暴行事件で練っていた“おぞましい計画”
NEWSポストセブン
2泊3日の日程で新潟県を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA)
《雅子さまが23年前に使用されたバッグも》愛子さま、新潟県のご公務で披露した“母親譲り”コーデ 小物使い、オールホワイトコーデなども
NEWSポストセブン