落選の理由ははっきりしない。選考過程も落選理由も公開されていないからだ。そもそも何が申請されたのかも非公開で、提出資料は事前事後にも公開もしていない。
2015年に登録された「南京虐殺事件」の場合は、事前に中国側が積極的にPRしていたため、日本側も察知できた。だが、申請に際して日本政府が内容を開示してほしいと中国政府に申し入れたところ、拒否された。その登録を受けて日本政府がユネスコへの分担金拠出を一時凍結、透明性を高める制度改正を求めているが、進捗していない。
◆委員会に日本人は1人もいない
確かに「世界の記憶」には制度上の不備が多い。申請の上限は2年ごと1国2件だが、国、団体、個人を問わずに申請できる上に、複数国、複数団体が行う共同申請は別枠とされている。これまではほとんどフリーパスと言ってもよい状況なのだ。そのため、チリ、ブラジルやチベットで行われた民衆抑圧など「記憶」というにはまだ生々しい政治的な案件の申請は年々増加している。
また例年100件を超す審査をこなすユネスコ事務局内の国際諮問委員会はわずか14人、アジア太平洋小委員会は10人しかいない。ちなみにアジア太平洋小委員会の10人のうち5人が中国人と韓国人。日本人は1人もいない。
慰安婦資料に至っては、申請時の資料が2744点という膨大な数で、読み通した人はいないと断言してよい。