籔本雅巳と森下竜一──。奇しくも彼らの動きは、安倍政権の進める医療政策と足並みが揃っている。とりわけ第二次政権発足以降、安倍は先端医療や高齢者向けの医療・介護を成長産業と位置付けて力を入れてきた。そこに橋下徹や松井一郎という維新の会が打ち出した政策が複雑に絡み合い、それぞれが果実を得ようとしているかのように見える。

◆医療ツーリズム

 籔本の率いる錦秀会グループは、先代理事長の秀雄が1957年に開設した大阪市住吉区の阪和病院からスタートしている。その頃を知る人物がいる。被差別部落解放運動に取り組んでいる自由同和会浅香支部長の畑中幸司だ。

「阪和病院とは、先代理事長が木造二階建ての産婦人科医院を始めた頃からの付き合いです。当時の運動団体は部落解放同盟しかなく、私の父には正式な肩書もありませんでしたが、父も運動に携わっていました。

 その頃病院経営が傾いた時期があったが、救急病院の指定を受けてから経営が上向いた。その手伝いをしたのが父たちで、行き倒れの情報を得て、病院に運んでいました。そうして患者が増えていき、錦秀会は救急病院として大きくなっていったんです」

 阪和病院には畑中の父親たちによる活動の旧恩もあった。錦秀会グループの社会福祉法人では、今も部落解放同盟の支部幹部が評議員を務めている。

 そうして入院ベッド数40床だった錦秀会は、いまや5800床に達する日本屈指の医療法人グループに成長する。12病院、14の介護施設、3看護教育施設、3訪問看護施設というマンモス医療法人である。

 そこまで大きくしたのが、1995年に理事長に就任した二代目の雅巳だ、と錦秀会の関係者が説明してくれた。

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