睡眠時無呼吸症候群は咽頭付近の空気の通り道が狭くなり、いびきや日中の眠気、倦怠感などの症状が起こる。肥満の中高年男性を中心に患者は300万~500万人と推計されている。
睡眠中の検査で、寝ている間に呼吸が止まったり、止まりかける睡眠呼吸障害が1時間に5回以上あって、かつ日中の眠気や疲労感などの症状を伴う場合に睡眠時無呼吸症候群と診断される。
睡眠中に呼吸が止まると一時的に酸欠状態になる。覚醒により呼吸が再開し、急激に酸素が体中の組織に入るのを繰り返すと間欠性低酸素血症になりやすい。こうなると血管内皮が障害され、体内に炎症が起き、さらに脳・認知機能にも悪影響を及ぼす。順天堂大学医学部公衆衛生学講座の谷川武教授に聞いた。
「間欠性低酸素、胸腔内圧の亢進、眠りが分断されるなどで交感神経を睡眠中も亢進させると疲れが取れません。他に糖尿病、高血圧の原因にもなります。本来、睡眠中は副交感神経が優位になり、心身を回復させ、呼吸や循環、内分泌機能などのバランスが取れます。ところが睡眠時無呼吸症候群で交感神経活動が亢進すると調整機能のバランスが崩れ、内分泌系の異常や体内の炎症に繋がります」
睡眠時無呼吸症候群は不整脈のリスクが4倍になる。特に不整脈の一種の心房細動の場合、心房が異常な電気刺激を受けて十分に収縮できなくなって血栓ができる。それが脳に飛んで心源性脳梗塞となり、命を落とすこともある。
1022名を対象に3年間追跡した研究結果によると睡眠時無呼吸症候群の重症例では脳卒中発症リスクが3.3倍になることがわかった。さらに繰り返す間欠性低酸素血症によって、交感神経の亢進とインスリン抵抗性の悪化から、2型糖尿病の発症リスクを高めるとの研究結果も報告されている。