名古屋駅から繁華街に向かってタクシーで“名古屋名物”の100m道路(※横幅が100m以上の大きな道路。名古屋と広島にのみ存在)を走っていると、どの車もきちんとウインカーを出してから車線変更し、クラクションの音も聞こえてこない。さらに、名古屋随一の繁華街・栄にある老舗デパート・三越では、買い物客がエスカレーターの右側をきれいに空けていた。
一方、あるスナックの前に真新しい開店花が置かれている。通りがかりの女性が慣れた手つきで花を抜いていく。彼女に話を聞くと「えっ!? 開店花を持っていくのはお祝い。花がないのは繁盛店の証だから」と涼しい顔。この風習は変わってないようだ。
名古屋市民たちが「行きたくない街No.1」に選ばれたことに対して危機感を持っていないわけではない。60代男性が言う。
「最初は腹がたった。でも、途中から嫌われる自分たちにも理由があるのではと考えた。例えば芸能人が全国ツアーを回った際、“名古屋はノリが悪いから二度と来たくない”と言うらしい。“ヒューヒュー”とか言うのが恥ずかしいだけなんだけど…。年寄りは今さら性分を変えられないけど、せめて孫にはライブに行ったら積極的に盛り上げろって言っているよ」
50代のタクシー運転手は名古屋のために努力を重ねる。
「名古屋の魅力を外から来た人に伝えたいと思い、ガイドの資格を取る勉強を始めました。名所を巡るコースの組み立て方などを学んでいます。勉強しているうちにわかったことなんですが、名古屋には観光地はたくさんあるのですが、“目玉”がないと感じるようになりました」
実際、名古屋市には観光資源がないわけではない。名古屋城をはじめとしてイケメンゴリラ・シャバーニ君で全国区となった東山動植物園、熱田神宮、2017年にオープンしたレゴランド・ジャパンなど、優良コンテンツがあるにもかかわらず、「名古屋には見るべきものはなにもない」との市民の声は多い。この批判を行政はどう捉えているのか。名古屋市観光文化交流局のナゴヤ魅力向上室室長の田頭泰樹さんが言う。