ビジネス

「あえてポキっと折れる傘」 郵便局で売り上げ伸ばすワケ

突風でも安全な傘

 郵便局で買えるものといえば、はがきに切手、そして“傘”。突風を受けた際に「あえて折れる」ことで事故を防ぎ、しかも一度閉じて開けば元に戻るユニークな傘が販売され、かなり売れているのだ。開発をしたのは無添加スキンケアを販売している会社だという、その実態に迫る!

 傘生地を支える“親骨”は、内側からの力に弱い。突風でこの骨部分が外側に折れ、傘が壊れた経験はないだろうか。

 長寿乃里の『ポキッと折れるんですR』は、親骨に“反転ヒンジ”を設置した長傘だ。風速15m以上の風にあおられるとヒンジが自ら外側に折れ、傘を閉じて再び開くとまっすぐの状態に戻る。接合部分をあえて折れる構造(※2015年10月に特許取得)にすることで、風圧を逃がし、壊れにくくしたのだ。これにより、風にあおられて転倒しにくいなどの安全面もカバーできるという。他社からは、親骨の本数を増やして強度を高めた傘や、特殊形状で風の抵抗を減らした傘などが出ているが、重い、高いなどのデメリットもあった。

『ポキッと折れるんです』は、見た目や重さは一般的な傘と変わらず、価格も1080円と手ごろだ。そんな画期的な傘をなぜ、無添加スキンケアを通信販売で扱ってきた長寿乃里が開発するに至ったのか。その背景には彼らの環境に対する想いがある。

 長寿乃里の商品は、保存料などの化学合成を排除した自然由来成分、いわば大地の恵みを使用している。大地が汚れていては、利用者に安心して使用してもらう商品を届けることができない。だからこそ、環境問題につねに関心を持ってきた。その1つが、ビニール傘のゴミ問題だ。

 安価なビニール傘は電車やバスに放置されて大量廃棄されたり、折れて捨てられた傘で排水溝が詰まり冠水や水害につながることもあったり、と問題は深刻だが、現状を知る人は少ない。

 そんな中で、関連会社から持ち込まれたのが、前述の“反転ヒンジ”の技術だった。壊れた傘が環境問題になるなら、壊れにくくゴミにならない傘を作ればいい。逆転の発想で始まった開発は、どの程度の風で折れるようにするのか、圧力の加わる親骨と生地を結ぶための糸の位置はどこが最適かなど苦労もあったが、傘メーカー専門ではないからこそ自由な発想ができたともいえる。「どの傘にも当たり前のように『ポキッと折れるんです』の構造が搭載され、安全で環境にやさしい世の中になれば嬉しいですね」と担当者。

 2016年12月、通信販売を通じて関係があった日本郵便南関東支社の164郵便局で始まった試験販売では、局員や利用者の口コミで評判が広がり、2000本が完売。2017年6月12日からは45都道府県約4500の郵便局のほか、家電量販店などでも販売を開始。売れ行きは好調で、2018年には子供向けの「ポキッと折れるんですKIDS」(1620円)も新発売された。

※女性セブン2018年3月8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン