「もし金正日が話してわかる人間なら、北朝鮮は今のような状態ではなかったでしょう。とっくにもっと良くなっています。日朝会談にしても、すでに進展や成果があったはずです。
金正日は普通の理論や常識が通じる人間ではありませんし、話し合いで事を解決するような人間でもありません。それは彼がこれまでにやってきたことを見れば明らかではないですか。
ビルマのアウン・サン廟、金浦空港爆破事件、それに私が直接の命令を受けた大韓航空機爆破など、こういうことは平和時にはまずあり得ないことですし、普通の常識から考えてあってはならないことです。これらのことを金正日が指導してきたという事実は、彼がいかに世界のルールや常識を無視した人間であるかを雄弁に物語っています。彼はごく当たり前の常識さえ通じない小さな自分だけの世界に住んでいるのです」
このことは支配者が子の金正恩になってからも変わっていない。北朝鮮の核ミサイル問題は話し合いで解決できるわけがないのだ。
一方で、放っておけば北朝鮮はそのうち内部から崩壊すると期待する者たちがいる。しかし、それもまた甘い夢想であることを金賢姫は指摘していた。
「人民の生活があまりに悲惨なので、以前とくらべて一般の人々の不満が少しずつ表面化してきているという話は私も聞いていますが、それはシステムに対する組織だった暴動ではなく、単に食物欲しさに一部の人々が動いているといった程度のことだと思います。北朝鮮のような社会で組織だった暴動を起こすには、大変な勇気がいります。それこそ命がけでやらねばならないことだし、はたして一般人民がついてくるかというと大いに疑問です」