試合後に円陣を組む松山商業ナインと重澤監督(撮影:藤岡雅樹)


 球史に商業高校の栄光あり──。かつては松商を筆頭に、高松商業(優勝は春2回、夏2回)、徳島商業(春1回)、高知商業(春1回)の「四国四商」や広島商業(春1回、夏6回)などが甲子園を席巻した。しかし、2年前のセンバツで準優勝を飾った高松商業を除き、いずれの高校も松商と似た境遇に置かれている。

 23日開幕のセンバツでも、出場36校の中で、公立の商業高校は、富山商業のみ。さらに工業高校も21世紀枠で出場する由利工業(秋田)だけだ。一方で、四国から出場するのは松山聖陵に明徳義塾、高知、そして英明とすべて私立である。

 全国で弱体化する商業高校の象徴が、松商であろう。かつては3学年あわせて1800人の生徒がいたマンモス校も、少子化の流れには抗えず、現在の生徒数は1060人。野球部全盛期は男女がおおむね同数だったが、現在は女子が7割を占める。

「昔は松商野球部が、いわば愛媛県のオールスターチームだった。現在は、選手が分散していますし、良い選手がいたとしても、中学2年生の頃には私立への進学が決まっていることもある。(推薦入試の条件となる)中学3年の成績が分からないのだから、公立校は太刀打ちできません」

 松商野球部のOB会長を務めた経験を持つ御手洗健は、重澤を激励しながら、現在の松商に足りないピースを「四国のダルビッシュ」と語った。

「四国の学校が勝ち上がる時は、圧倒的な投手がいた。最近だと西条の秋山拓巳(現・阪神)、済美の安樂智大(現・楽天)がそう。ただ、良い選手を獲りにいこうにも、成績の評定平均が2コンマいくつとかで……これじゃあどうにもならん」

 やはり受験偏差値上昇が低迷の大きな理由だと口を揃える。それだけ選手の勧誘に苦心しているのだろう。

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