ここでは一部の例しか紹介できないのが残念だが、あらゆる時代に同様の改竄が行われている。

 しかし、問題は韓国側だけでなく、日本側にもある。我々自身が歴史認識を整理できていないのだ。たとえば任那が日本領であったことをどの程度、理論武装しているだろうか。中国は高句麗をかつて中国東北部の少数民族が作った国家だとし、継承国家は中国であると理論武装をしきりにやっている。

 また、百済の位置づけをどうするのか。百済からの文化流入に対する公式見解がない。長年、韓国の世話になったなどとは誰も考えてこなかったのだが、それが忘れられている。

 我々の見解、立ち位置が明確になっていないから、隣人の嘘がまかり通り、時にそれに引きずられるのだ。

【PROFILE】八幡和郎●1951年滋賀県生まれ。東京大学法学部卒業後、通商産業省入省。北西アジア課長(南北朝鮮も担当)、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任。現在、徳島文理大学教授。近著に『消えた江戸300藩の謎』がある。

※SAPIO2018年3・4月号

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