芸能

長澤まさみ 「月9」で示す「コメディエンヌ日本代表」の風格

捲土重来を期す(番組公式HPより)

 このところ「不調」ばかりが伝えられた伝統の「月9」だが、この作品は流れを変えるかもしれない──。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 かつての勢いはどこに? 平均視聴率で民放キー局中4位と低迷しているフジテレビ。挽回をねらって大幅改編に踏み出しています。中でも看板の「月9」ドラマの先行きに注目が集まっている状況下、いよいよ長澤まさみ主演の『コンフィデンスマンJP』がスタートしました。

 長澤さんが演じるのは信用詐欺師のダー子。冴えた頭脳の持ち主で、どんでん返し満載のシナリオを編み出す一方、天然でどこかつかみどころがない不思議な存在。そして東出昌大演じるボクちゃんと小日向文世のリチャードの3人が詐欺仲間となり、悪徳富豪をターゲットにその莫大な財産を根こそぎ騙し取っていく。だましだまされ二転三転する一話完結型の冒険譚、ということらしい。

 その第1話は……スカっと爽快、めくるめく展開。実に小気味良いスピード感で新鮮な印象を残しました。

 まず、何と言っても見物はダー子です。着物姿の賭博師から、突如マルサの女になり、飛行機のキャビンアテンダントへ、くるくると変身。キャラが変転していく速度感のみならず、徹底した「なりきり感」もいい。容姿や色気といった女の武器に依存せず、どこか自分を突き放し冷静に客観視している仕事師ぶり。だからこそ、見事に別人格に乗り換えていけるのです。

 秘書からオタク、大物女優から山形弁や中国語を操る人物へと今後も多種多様なキャラに扮してくれるそうで、長澤さんはいよいよ日本を代表するコメディエンヌの風格。大注目です。

 一方、東出さん演じるボクちゃんもハジけています。茶髪のホスト、アロハに短パンのチンピラ街道まっしぐら。躊躇がみじんも感じられないのがいい。昨年のドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS)で粘着質の不気味な夫を演じ、殻を破る手応えを得たのかも。「外れる」ことを恐れず奇妙なキャラを突き詰めていく姿は拍手です。

 そこへ小日向さん演じるリチャードの落ち着いた詐欺師ぶりが重なりあって、いい味を出す。まさに「扇の要」、まとめ役としての小日向さんの存在が機能しています。

 そして第1話のゲスト・江口洋介も光った。慈善団体の紳士を装いつつ実は“日本のゴッドファーザー”と囁かれるヤクザの親分・赤星栄介を演じた江口さんが、渋い顔を作れば作るほど、見ているこっちは「クスっ」と笑いを漏らさざるをえない。『ガイアの夜明け』のナビゲーターや『BG』の警視庁SP役で見慣れたあの生真面目風の渋顔の、まさにパロディ版として見えてくるあたりシャレが効いています。

「大金をまきあげる詐欺師たち」という設定から、古典的名作映画『スティング』を思い浮かべる人も多い。とはいえ、このドラマから私は「メイドインジャパンのコメディ」の特徴、日本独特の色合い風合いを強く感じます。

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン