(3)従業員代表機能を発揮する

 労働基準法では、「労使協定」、「労働者代表」という言葉がよく登場します。労使協定とは、会社と労働者間との約束を書面にしたもので、個々の労働者と会社が交わす雇用契約書の労働者全体バージョンと考えればよいでしょう。

 実際に、会社と労使協定を結ぶ役目を果たすのが、労働者の過半数で組織される労働組合です。労働者過半数組合がない会社では、「労働者代表」となりますが、過半数労働組合がない会社では、労働者代表の機能が形骸化しやすい傾向はあります。労働基準法では、話し合いや投票など、民主的な方法で過半数の承認を得た労働者を「労働者代表」として選ぶよう定めています。

 しかし、慣例的に総務担当者や経理担当者が労働者代表になっているケースがよく見られます。ひどいところでは、社長が会社の言うなりに押印してくれる人を労働者代表に指名しているケースもあったりと、名ばかり労働者代表が労使協定に合意していることが多いというのが実情です。

 このような会社では、会社主導ではなく、労働者主導で労働者を代表して会社に意見を言える人を労働者代表に選ぶだけでも、会社側との交渉の舞台ができるでしょう。

 代表的な労使協定に通称「36協定」があります。これは、1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える残業や休日労働をするのに必要な労使協定です。この36協定が未締結だと、会社は残業や休日労働を一切させることができないため、日本企業のほとんどが結んでいます。

 36協定では、1年間○○○時間、1か月○○時間、1日○時間、休日労働月○日という具合に、残業時間や休日労働の上限を約束します。もし、長時間労働に対して不満を持っている労働者が多ければ、労働者代表がきちんと会社側に労働者側の意見を伝えます。そして、36協定を締結する段階で、残業時間や休日労働の上限の引き下げを交渉すれば、長時間労働の改善につながります。

「こんな給料が安い会社なんて、すぐに辞めてやる!」とヤケを起こす前に、打てる手立てがあることを頭に入れておくことは大切です。会社側との粘り強い話し合いや交渉で、自分の評価や待遇だけでなく、経営全般も好転する可能性があるのです。

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