筆者は『バイキング』水曜レギュラーなので、昨年末の特番の内容が固まるまでのプロセスは何となく知っていた。当初は、月~金のスタジオ下手に着席する、通称“専門家チーム”と、上手のタレントたちが大集合して、一年のニュースを振り返るという企画だったようで、私もスケジュールを“仮抑え”されていたからだ。
それが、“ばらし”になり、どんなことをやるのかと思ったら、件の高樹沙耶や清水アキラ、さらには生で藤田紀子さん、朝青龍などが出演。坂上が“直撃”する様子は、バラエティー班が制作しているとは思えない、芯を食ったインタビュー番組になっていた。
『バイキング』スタッフが新たに坂上と新番組をやろうと思った背景には、前述のように、坂上と番組、双方の勢いが挙げられるが、それより大きいのは、スタッフと坂上の確かな信頼関係があるからではないか。
坂上の本職は、言わずと知れた俳優であり、3才から子役をしているので、芸歴はやがて半世紀に及ぶ。
良くも悪くも“古き芸能界”と豪快な芸能人の先輩たちを間近で見てきた坂上は、バラエティーの帯番組という“大所帯”を“座長”としてまとめるワザをもっているのだ。
坂上はスタッフに、非常に厳しい。たとえば生放送中、ちょっとでも段取りが悪かったり、ムリな尺調整をしていたりすると、フロアにいるディレクターをその場で注意をする。
コメンテーターに対しても、安全な立ち位置を崩そうとしない者や、“忖度”しているような者には容赦ない。
だが、これは『ボクらの時代』でヒロミも指摘していたことだが、坂上は「変わりようがスゴイ」、つまり、切り替えが早く、説教を延々引っ張らないし、CMが明けたら何事もなかったかのように次に展開していく。
『直撃!シンソウ坂上』で進行役を務め、『バイキング』でも全曜日、坂上の横に立つ同局の榎並大二郎アナに対しても同じで、ちょっとでも噛んだり、段取りを間違えたりすると、坂上はすぐにツッコむ。
だが、それは次の瞬間、必ず笑いになるもので、視聴者が見ていて不快に感じないものなのである。
身を削った発言をした者には、必ずフォローをしてくれるし、オンエア上で言い合いのようになった場合でも、その出演者がハケたのをスタジオの前室まで追いかけて行って礼を言っている。
俳優や歌手の大御所がスタジオゲストとして訪れたときの対応もそれは見事で、坂上は、ただヨイショしたりするハズもないうえツッコむところはツッコむだけでなく、たてるところや、その大御所が話したいであろうネタを必ず話させてあげる優しさも持ち合わせている。
専門家を含めた出演者への気遣いも見事で、飲み会を開いたり、年度初めには「よろしくお願いします」と全員にプレゼントを配るし、年末年始は全曜日、オンエア終了後に景品が当たるプチイベントを開いてくれるのだ。
つまり、坂上の行動は、MCというよりはドラマや映画の座長のそれで、そんな坂上に、同年代や年下の男性スタッフが惚れこんでいる…というように私には見える。
恐らく、取材に出たいと言い出したのは坂上のほうからなのではないか。視聴者が聞きたいことをしっかり聞くのに、相手は、なぜか怒らず、「来てくれてありがとう」「聞いてくれてありがとう」と感謝する。本人は否定するかもしれないが、それは坂上の“人柄”の成せるワザである。
『直撃!シンソウ坂上』、個人的に、かなり楽しみな新番組だ。