東亜大学教授の崔吉城氏


 ところが、同書が日本でも紹介されたところ「慰安所は日本で言うところの遊郭、売春宿と似たような場所だった」と解説された。日韓で極端に相反する解釈がなされたのである。双方の正反対の意見を見た私は、慰安所の実態を知る上で貴重な研究資料となるこの日記を、先入観や偏見を排し反日・親日・嫌韓・親韓という立場を超えて客観的に読むべきだと考えるに至った。そして、安氏による訳だけでなく、日記原典とも照らし合わせながら1年以上かけて精読して上梓したのが『朝鮮出身の帳場人が見た 慰安婦の真実─文化人類学者が読み解く「慰安所日記」』である。 

 朴氏は30年以上に渡り1日も欠かすことなく日記をつけ続けた。安氏により刊行されたのは、26年分存在する日記のうち、日本軍政下にあったビルマとシンガポールの慰安所の帳場人として働いた1943年と1944年の2年分である。

 朴氏は穏やかで華やかな生活を送り、慰安所の仕事は規則正しかった。一方で、勤務する慰安所や住むところを変えることも多かった。当時は、戦争の前線を追って多くの商売が成り立っていた。軍需産業から性産業まで、多様な商行為が各地で行われていたのである。朴氏も、当該2年間だけでも釜山からビルマのプローム、アキャブ、ラングーン、シンガポールと移動し様々な慰安所に滞在している。その過程で朴氏は、職場が決まるまでは寝食する場所も定まらない毎日を送ることがあった。

「寝食をあの家、この家ですませていて、ほんとうにすまなく耐えがたい」

 慰安婦を直接管理した朴氏が軍人であったかどうかというのは、日記の解釈の大きなテーマだ。そして日記から読み取れる、時に不安定な朴氏の生活は、彼が軍人や軍属ではなくただの民間人であることを如実に物語っている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
東条英機・陸軍大将(時事通信フォト)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最低の軍人」ランキング ワースト1位はインパール作戦を強行した牟田口廉也・陸軍中将 東条英機・陸軍大将が2位に
週刊ポスト
昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン