◆慰安婦は商売だった

 朴氏は帝国臣民としての意識を強く持ち、日本帝国に忠誠を尽くした人だった。彼は慰安所を、国家のために戦う兵士を慰安する、国策の慰安業だと考えていたようだ。命がけで戦地に赴く軍人にとって、性は恥ずかしいものではなく、慰安業とは公的な“セックス産業”であった。やっていることは売春でも、「遊郭」は単なる女遊びの場所で、「慰安所」は兵士を慰安するところ。実際、日記の中でも両者は区別されており、自分の仕事にプライドを持っていたと言ってもいいだろう。

 朴氏はまた教養のある人で、博物館や映画にも頻繁に出かけている。時には慰安婦たちや仲居などと一緒に行くこともあった。「慰安婦を連れて市庁前の広場の大詔奉戴記念式に参加した」といった記録も多く、積極的に行事にも慰安婦と共に参加している。慰安婦が蔑むべき存在であるなら、このようなことをするだろうか。

 慰安婦について見てみると、慰安婦になるには就業の許可が必要であった。それは、性病など衛生管理の必要性からである。検査などには軍の協力もあったようだが、それは慰安婦のためというより、日本軍の健康管理のためだろう。慰安婦はまた、手続きによって休業や廃業ができる存在でもあった。そしてなにより、慰安婦から見る慰安業は、商売である。彼女たちは預貯金もでき、出稼ぎであるため送金もできた。

 近代以前や、平時より戦時には、売春は醜業ではなかった。今の感覚ではなく、その時代に即した考え方をしなければならないのは学問の基本である。日記を読む限り、彼女たちが“性奴隷”であったとは到底考えにくい。

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