──そもそもギャンブル依存症は「はまった人が悪い」という自己責任論が根強く、病気だと思われていないことが、対策が進まない大きな要因ではないか。
田中:パチンコでも競馬や競艇などの公営ギャンブルでも、運営サイドが大々的に宣伝を打ってギャンブルに手を出させるように仕掛けておきながら、その影響で依存症という病気になる人が出ても知らんぷり。これはどう考えても無責任だし、おかしいと思います。事業者は莫大な売り上げがあるのだから、その中から依存症対策費を拠出すべきです。
結局、運営者側に依存症対策が義務付けられていないことのしわ寄せは、社会へと跳ね返ってきます。ギャンブルでお金や仕事がなくなり生活保護を受ける人、借金苦で罪を犯して逮捕される人、そういった人たちへの対処費は国民の税金から捻出されているわけですからね。
──そもそも、これだけ広くギャンブルが認められている日本で、いまさらカジノができたからといって大きな経済効果があるのか疑問だ。
田中:それなりに経済効果はあると思いますが、一番問題なのは、これまで罹患していないような人がギャンブル依存症になる可能性があることです。カジノはオシャレな雰囲気もあるので、男性よりむしろ女性のほうがはまってしまうかもしれません。
例えば、ちょっとセレブなマダムたちは、誰が見ているか分からない近所のパチンコ店には入れなくても、旅行がてら友達どうしでIR施設に行くようなケースが出てくるでしょう。そして、買い物をしたお金がカジノで儲かってチャラにでもなろうものなら、「また行きましょうね」と病みつきになる。
その他、地方の中小企業でよく社員旅行で海外のカジノに行くような会社がありますが、国内にカジノができれば、より行きやすくなります。そして、社員がカジノで大損しても、社長が後先を考えずにお金を貸したり……。そうやってギャンブル依存症は誰にでも罹患し、蔓延していく恐ろしさがあるのです。
──カジノに参入しようとしている事業者は、どこまでマイナスの影響を考えているのか。
田中:マイナスの影響については小さく捉えたい、まずは自分たちの儲けが最優先だと思います。そもそも、観光事業目的でなぜ日本にカジノを導入しなければならないのか。インバウンド需要も見込んでいるのかもしれませんが、いま日本を訪れる外国人観光客がIRのような豪華施設に本当に泊まりたいのかは疑問です。バックパッキングに近い旅をして民泊が人気になっているくらいですからね。