スポーツ

千代の富士引退は素早く鮮やかな引き際で歴史に残る名場面

引導を渡したのは貴乃花だった(共同通信社)

 一度昇進すれば、たとえ負け越したとしても“陥落”することはない。それだけ「横綱」の地位は重いが、番付に見合う相撲が取れなくなれば、選択肢は引退しかない。そして、大横綱の引退が新たなスターの誕生と同じタイミングになることは決して珍しいことではない。

 国民栄誉賞を受賞し、10年間、59場所にわたって綱を張り続けた第58代横綱の千代の富士に引導を渡したのは、当時18歳だった新鋭・貴花田(現・貴乃花親方)だった。

「千代の富士は1990年11月場所で31回目の優勝を飾りますが、左腕の負傷により翌年1月場所を途中休場し、3月場所も全休。休場明けの初日に、最年少記録を軒並み塗り替えてきた18歳の貴花田との初の対戦が組まれ、寄り切りで敗れた。千代の富士は3日目に新小結の貴闘力に敗れたところで引退を表明しますが、引導を渡したのは貴花田だったと考えていいでしょう」(元力士)

 その夜の引退会見には、地元・北海道選出の鈴木宗男代議士も駆けつけ、100人近い報道陣が部屋に集まった。師匠の九重親方(元横綱・北の富士)の隣で、千代の富士は目を真っ赤にはらし、声を詰まらせながら「体力の限界、気力もなくなり……」と腹の底から絞り出すように口にした。

「角界の歴史に残る名場面でしょう。当時から、相撲の取り口と同様、素早く鮮やかな引き際だと称賛されました」(同前)

※週刊ポスト2018年6月1日号

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン