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【関川夏央氏書評】恐竜登場、98歳男が主役の2046年描くSF

『九十八歳になった私』/橋本治・著

【書評】『九十八歳になった私』/橋本治・著/講談社/1600円+税

【評者】関川夏央(作家)

 橋本治は二〇四六年三月、九十八歳になった──というお話。毛細血管が炎症を起こす難病にかかり、セキチューカンキョウサクで歩くのも不自由だが、まだ生きている。九十九歳になるまでの日常を一人称で語る。

 橋本治は七十歳まで住宅ローンを返し、平成の三十年間で五億円以上を銀行に払った。誠実な人なのである。九十歳すぎ、東京湾沖を震源とする大震災に遭遇した。たまたま歩道橋を上っていたときで、通りすがりの青年に助けられた。東京は壊滅、ローン完済の家も崩れた。

 避難所から奥多摩の「ジジー」の収容所にまわされ、さらに栃木県日光近くの「仮設」に入った。そこではプテラノドン(翼竜)が空を飛んでいて、動物をさらう。ときどき老人もさらう。科学者が遺伝子操作でつくったらしいが、『ジュラシック・パーク』以来、科学者はロクなことをしない。

 熱帯化で夏は四十度、エアコンをつけると放熱で外気温はもっと上がる。エネルギー不足で自動運転の車は使い惜しみされ、人力車が重宝される。電力倹約のためにパソコン使用も控えめにといわれるが、キーボードにさわったことのない主人公には関係がない。

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