倒れてから自宅の地下にある書庫にもあまり行っていないので、今回の取材を受けるに際し、取り上げる3冊の本をあらためて買いました。すると不思議なことに、何度も読んでいるはずなのに、こうして手に取っても、まるで他人の本のような気がするんですね。

 あんなに本を読んでいたのに、こんなに読まないでいられるなんて、なんだか変なことになっちゃったなと思うけど。

 これから先も自分が本を必要としないままでいるのか、それとも元に戻るのか。それは僕にもわかりません。

【1】「カフカとの対話 手記と追想」 グスタフ・ヤノーホ著、 吉田仙太郎訳 1951年刊行 みすず書房、本体3800円+税

【2】「モンテーニュ エセー抄」 モンテーニュ著、宮下志朗編訳 1580年刊行 みすず書房、本体3000円+税

【3】「ヘンリ・ライクロフトの私記」 ギッシング著、平井正穂訳 1903年刊行 岩波文庫、本体720円+税

◆書籍データ中の刊行年(発表年)は最初の版のもの。版元、価格は現在入手できるおもな版のもの。

【PROFILE】やまだ・たいち/1934年東京都生まれ。脚本家。早稲田大学卒業後、松竹大船撮影所を経て脚本家に。「岸辺のアルバム」を始め脚本を手掛けた名作テレビドラマ多数。小説『異人たちとの夏』(山本周五郎賞、新潮文庫)、エッセイ集『月日の残像』(小林秀雄賞、新潮文庫)など著書多数。

※SAPIO2018年5・6月号

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