◆自供した組員が殺された
暴力団はかねてから司法取引導入を警戒し、「ヤクザ組織が壊滅しかねない」(独立組織幹部)と危機感を募らせてきた。現時点では殺人罪は適用対象にはならないが、すでにその先を見越した警戒の声も聞こえてくる。
「殺人の実行犯は例外なく無期懲役が相場だが、司法取引で有期刑になるなら、揺さぶりにはなる。
今どきは幹部が殺人教唆に問われないために、言葉で直接指示をせずに実行犯の独断的犯行に偽装したり、ヒットマンを出頭させなかったりしているが、そうした対策も変えなくてはいけないかもしれない。ヒットマンも、その時は納得していても、待遇に不満があったり、人間関係がこじれたりしたら取引に応じる人間だって出てくるかもしれない」(広域組織二次団体総長)
分裂抗争の渦中にある3つの山口組でも神経をとがらせており、勉強会を開き、司法取引の概要をまとめたレポートを配布しているといわれる。先述した配布文書には、司法取引が「共謀罪」と組み合わされることへの危機感も綴られている。共謀罪は犯罪の計画段階での摘発を可能としているので、〈司法取引によってありもしない犯罪計画がでっち上げられる懸念があります〉と警鐘を鳴らしている。
ただ、早々に、司法取引に応じる組員が出てくるのかは不透明だ。山口組の顧問弁護士だった山之内幸夫元弁護士は「暴力団事犯に対してどの程度、実効性があるのか疑問に思っている」と語った。