国内

ペット流通の裏側 劣悪環境の繁殖業者で衰弱死することも

福井のパピーミルでは床が不安定なすのこ状のマス内で過密飼育(写真提供/公益社団法人日本動物福祉協会)

 日本におけるペット流通は、まず繁殖業者(パピーミル)が子犬・子猫を生産し、ペットオークションにかけられ小売業者(ペットショップ)に渡り、そこから一般の飼い主のもとに行くこととなる。

 かつては、この流れの中で売れ残ったペットを自治体が殺処分していたが、平成25年の法改正以降はそれができなくなった。そのため、売れ残った犬猫を有料で引き取る「引き取り屋」と呼ばれる在庫処理業者が暗躍するようになった。この引き取り屋は、買い取った犬猫を販売したり、さらに繁殖させたりするという。そこにかかわるのが、以下の2種類の業者だ。

【繁殖業者(パピーミル)】

 ペット業界の子犬や子猫をどんどん作り出しているのが、英語で“子犬工場”を意味する“パピーミル”と呼ばれる繁殖業者。不特定多数相手のペットショップにオークション経由で流通させる繁殖業者は、出荷途中などで命を落とす数も考慮し、子犬や子猫を大量生産するべく、何度も子を産ませ続ける。なかには2年間で6回も帝王切開で出産をさせられた犬もおり、繁殖できなくなったら、餌もそこそこに劣悪な環境下で衰弱死させられることも少なくない。

 犬猫385頭を過密飼育し、日本動物福祉協会から刑事告発された福井の繁殖業者も、パピーミルにあたる。この福井の事件では3月26日に告発状が受理され、5月18日には動物愛護法違反(虐待)や狂犬病予防法違反容疑で書類送検となったが、業者を指導監督する県側は当初から「明らかな虐待はなかった」と述べていた。

 400匹近い犬猫をわずか2人で飼育していたが、飼育頭数に対する飼育員数などに法令上の数値規制がないため、「虐待の認定は困難」というのだ。一般的な私たちの感覚と、取り締まる側とにズレが生じてしまうのは、動物愛護法に明確な基準がないから。こうした曖昧さをなくすことが、今年の動愛法改正への論点の1つとなっている。

 引き取り屋では、掃除の手間を省くため、ケージの底板を抜いていることが多い。底板を抜かれた金網の不安定な足場は、犬に多大なストレスを与えている。排泄物受けすらないケースも多く、糞尿が下段に降り注ぐため、上段には転売できそうな犬を置き、下段には売れそうにない老犬などが押し込められていることも。

【引き取り屋】

 平成25年の動物愛護法改正で、業者が犬猫を行政(自治体)で処理してもらえなくなったことで表面化した商売。繁殖力が衰えた親犬・親猫を1頭あたり数千〜数万円程度の有償で引き取る“引き取り屋”は、過剰生産と法改正で活性化したともいえる。

 引き取り後、売れる犬猫はさらに転売、親には限界まで子供を産ませ、転売できず繁殖用にも使えない犬猫はケージに入れられたまま、掃除や散歩の世話も病気の治療もされず、飼い殺しにされることが多い。

 引き取り屋ではネグレクト(飼育放棄)など虐待に発展しやすく、事件化している。

※女性セブン2018年6月28日号

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン
オリエンタルラジオの藤森慎吾
《オリラジ・藤森慎吾が結婚相手を披露》かつてはハイレグ姿でグラビアデビューの新妻、ふたりを結んだ「美ボディ」と「健康志向」
NEWSポストセブン
川崎、阿部、浅井、小林
〈トリプルボギー不倫騒動〉渦中のプロ2人が“復活劇”も最終日にあわやのニアミス
NEWSポストセブン
別居が報じられた長渕剛と志穂美悦子
《長渕剛が妻・志穂美悦子と別居報道》清水美砂、国生さゆり、冨永愛…親密報道された女性3人の“共通点”「長渕と離れた後、それぞれの分野で成功を収めている」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン
24時間テレビで共演する浜辺美波と永瀬廉(公式サイトより)
《お泊り報道で話題》24時間テレビで共演永瀬廉との“距離感”に注目集まる…浜辺美波が放送前日に投稿していた“配慮の一文”
NEWSポストセブン