ときわ台しゃれ街協議会が景観維持・街並み保存で重視しているのは”緑”で、緑豊かな常盤台を目指すために「家の敷地内に、最低でも一本の高木を植えることをお願いしている」(中島理事長)と言う。
しかし、塀や石垣の設置は維持・管理に莫大な費用や手間がかかる。また、最近では石屋が少なくなっていることもあり、発注から施工まで待たされる。そうした事情も勘案し、協議会のガイドラインは塀や石垣にまで言及していない。
「新たに建てられた住宅では、石垣や外壁、塀に大谷石が用いられることは珍しくなりました。住民の世代交代による意識の変化もありますが、相続や固定資産税が大きく起因しています。大谷石どころか、コンクリート造の塀や生垣を設ける家も減っているのです」(中島理事長)
常盤台のみならず、かつて高級住宅街と呼ばれていたエリアから邸宅は次々と消えた。最近の富裕層の住まいは都心部のタワーマンション。それが、ステイタスになりつつある。
鉄道会社もそうした潮流に乗って、沿線開発ではタワマンを続々と建てている。しかし、かつての高級住宅地が放つ高級感とタワマンとでは、その差は歴然としている。
各沿線の高級住宅地が衰退する中、東武と常盤台のアイデンティティでもある大谷石が駅舎や駅前広場に用いられて多くの人の目に触れることは、高級住宅地・常盤台が復権する第一歩になるかもしれない。