東上線を走る東武の電車


 今回のリニューアルで特徴的な部分は駅舎壁面、そして駅前広場に整備されたギャラリースペース”武蔵常盤小径”だ。どちらにも大谷石が使用されている。

 東武と大谷石はただならぬ深い関係にある。関東大震災が発生すると、東京の家屋は耐震性や防火性の重要性が高まり、耐震性や防火性に優れる大谷石の需要は増大した。1897年に大谷石搬出のために設立された宇都宮軌道を、1931年に東武が合併。新たに東武大谷線となり、1964年まで主に大谷石を運ぶ貨物列車が行き来した。

「大谷石が東武の地盤である栃木県で産出する石であることは認識していますが、リニューアル駅舎で建材として大谷石を使ったのはそうしたことが理由ではありません。もともとの駅舎が大谷石を使っていたという理由です。当時の駅舎に、なぜ大谷石が用いられたのかといった経緯までは不明です」(東武鉄道広報部)

 東武広報部は不明としたが、実のところ大谷石は常盤台とも深い関係にある。住宅造成が始まった昭和初期、常盤台に立ち並ぶ住宅のほとんどに生垣があり、その土台に大谷石が使われていた。また、家を囲む塀にも大谷石が使われた。常盤台の街も駅も、大谷石とともに歴史を刻んできたのだ。

「昭和期を通じて高級住宅に成長した常盤台ですが、造成当初から高級住宅街然としていたわけではありません。それでも、どこの家にも塀や石垣がありました。それらは常盤台が東武沿線にあるという縁もあって、東武沿線で産出される大谷石を使っていたのです」と話すのは、NPO法人ときわ台しゃれ街協議会の中島淑夫理事長だ。

 ときわ台しゃれ街協議会は、2007年から常盤台の景観維持・街並み保存に取り組んでいる。同協議会では、景観維持や街並み保存のルールとして「ときわ台景観ガイドライン」を制定。同ガイドラインでは「住宅地の敷地面積の下限を123平方メートル」に設定し、宅地の細分化による住環境の劣化を防いでいる。

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