昨年8月、全国紙に衝撃の記事が掲載された。相続で得た新潟県湯沢町のワンルームマンションを、115万円の費用を払って所有権を譲渡したという人の話。つまり所有者がお金を払ってその業者に所有権を移転してもらうという構図である。
所有権がなくなれば、管理費や固定資産税などの負担を免れる。記事で紹介されたケースの場合、所有者は3年分の費用を業者に支払って所有権を移転してもらったということだった。
もはや、そういう不動産は何かを生み出す試算ではなく、負担のみが生じる「負動産」である。しかし、それを引き取った業者はどういうビジネススキームで利益を出すのだろうか。その記事を読んだ時、私にはどうにも理解できなかった。
そして最近、そういった「有料引き取り」を大々的に行っている企業があると知った。その企業は売却すれば100万円から200万円で売れる物件を、「有料」で引き取っている。つまり、所有者にお金を払わせて所有権を自社に移しているというのだ。
これならまだ分かる。仕入れでまず利益を出して、売却すればさらに利益が出る。普通に売り出せば100万円以上で成約できる物件を、お金を払ってその業者に「処分を委託」してもらっている、ちょっと世間知らずな一般消費者が存在することによって成立するビジネスだ。
ただこの業者、仕入れた物件の管理費等を次の購入者が決まるまで払わないということで、いたって評判が悪い。
さて、誰も声を大にして言わないが、日本の国土の面積割合で90%以上の不動産が今や無価値である。田舎の山林や田畑は売り出されても買い手は付かない。詐欺まがいの原野商法に使われることはあっても、実際に林業や農業を行うためにそういった不動産を買う人はほとんどいない。
そして、古くなった住宅もほぼ無価値だ。ネットで探すと「タダでお譲りします」という古い住宅を容易に見つけることができる。中には、家の中の家具その他の「処分費として50万円お付けします」という物件まであった。
日本は今や全国規模で「負動産」の処分に困る時代に突入しているのだ。