ところが、1989年に初代ロードスターが発売されると、この小さなオープンカーは、日本だけでなく世界中で大ヒット! 「人馬一体」の走りの魅力と、庶民でも手に入る「手ごろな価格」がヒットの2大要因と言えるでしょう。その2つがあったからこそ、世界中の老いも若いも、男性も女性も、みんながロードスターを競うように手に入れたのです。
そのヒットは世界中の自動車メーカーにも多大な影響を与えます。すぐ後に、メルセデスベンツやBMW、フィアットなどから、続々と2座オープンカーがデビューしたのです。ロードスターのヒットを見て、あわてて新型オープンカーの開発をしたというわけです。
一方、日本市場はバブルが弾けてり、マツダの5チャンネル計画は大失敗に。その結果、マツダはフォードの傘下に下ることになってしまいました。
そんな状況下でもロードスターだけは着々と売れ続けます。2000年5月には、「53万1890台」で「2人乗り小型オープンスポーツカー」の生産累計世界一のギネス記録に認定。2016年には100万台を突破し、今も記録更新を継続中です。
そんなロードスターのイメージを活かすかのように、マツダは2000年代前半より新ブランドメッセージ「Zoom-Zoom」を展開します。「Zoom-Zoom」とは英語で「ブーブー!」を意味する子供の言葉。子供がクルマに抱くピュアな憧れを、マツダ車が体現しようというのです。そのプロモーションにぴったりなのがロードスターだったというわけです。
期待されずに生まれた過去。マツダの「ブランドアイコン」となった現在。では、ロードスターの未来はどうなるのでしょうか?
現在、自動車業界は大きな変革の時期を迎えています。環境問題への対応として電動化が進められていますし、交通事故を減らすために自動運転化への流れも強まっています。
そうした中で、「走る歓び」を最大の魅力とするロードスターはどうなるのでしょうか。これがトヨタやフォルクスワーゲンのような規模やシェアを追求するブランドのクルマであれば、未来は相当に厳しいと言えるでしょう。
しかし、ロードスターはマツダのクルマです。マツダの世界シェアは、わずか2%しかありません。逆に言えば、ニッチなニーズを満足させることがマツダの生き残りのカギといえます。いくら電動の自動運転車が普及しても、最後の最後まで「好きモノのニッチなニーズ」は残るはず。そんな「走る歓び」を提供し続けるのであれば、意外とロードスターの未来は長いのではないかと考えます。