やがて、「もみじの家」がオープンし、ハウスマネージャーを募集していることを知る。ずっと解決できなかった宿題に取り組めると感じた彼は、転職を決断したのだ。
いま、医療的ケアが必要なまま在宅で暮らしている20歳未満の子どもたちは全国に1万7000人いる。子どもの在宅ケアが充実していないために、病院でケアを受けている子どもは、さらに1万人いるといわれている。
この現状をなんとか変えたいと、内多さんは思っている。そのためには、まず「もみじの家」の経営を軌道に乗せて成功例をつくり、大阪や福岡、札幌など各地に広げていきたいと夢が広がる。
人生は選択の連続だ。どちらの選択が正しいかなんて、だれにもわからない。けれど、自分のなかに変わらぬ「芯」があるからこそ、迷いながらも、変わっていけるように思う。
イギリスの歴史家カーライルは、死の床で「うん、うん、これが死なんだ、やれやれ……」と言ったという。なんとも肩の力が抜けていていい。そんな境地に達することができるのは、人生を悔いなく生きた者の特権だ。
まだまだいくつも直面する人生の選択肢に、誠実に、真剣に、勇気をもって対峙したい。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『人間の値打ち』『忖度バカ』。
※週刊ポスト2018年7月6日号