「私は安定志向の人間でしたから、早期退職なんて考えてもいなかった。転職の決心をさせてくれた方々に本当に感謝しています」
内多さんの言葉は実に自然体だ。転職は一大決心には違いないだろうが、流れに身を任せた結果だったようだ。単刀直入に聞いた。
──収入はどうですか。
「うーん、やはり減りました」
──では、満足度はどうですか。
「それは高くなりました。53歳での転職ですが、退職までの7年間、一つのことに集中できる。それも自分が経験したかった福祉の仕事で子どもたちにもかかわれて、とても満足しています」
お金か、夢か、という選択肢がある。すぐさまお金を選択する人もいるだろうが、路頭に迷わない程度の収入があれば、夢を選択する人はけっこう多い。それだけ夢は、くせものなのだ。