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高齢者の体液割合は50%の“低貯水率”状態、脱水症対策を

白十字訪問看護ステーション統括 暮らしの保健室室長の秋山正子さん

 この季節、熱中症予防が盛んに叫ばれるが、気をつけなければならないのは中年までの世代と高齢者の体の違いだ。

 暑くてのどが渇いたり、だるくなったりして「あ、キケンだ」と気づけなくなるのが高齢者。家族はそこをよく知って、しっかり見守りたい。訪問看護などを通じて高齢者の体や生活をよく知る秋山正子さんに聞いた。

「熱中症というと真夏の炎天下で起こるイメージがありますが、実は梅雨明け頃、昨日まで涼しく、いよいよこれから気温が上がるという頃に、熱中症発症のピークが来ます」と言う秋山さん。

 総務省消防庁が発表した平成29年夏の『熱中症による救急搬送状況』によると、搬送人数および死亡者数がいちばん多かったのは7月。例年日本列島が梅雨明けする月だ。そして搬送された人の年齢区分では、半数近い48.9%が65才以上の高齢者だった。

「これは体が急な気温変化についていけないことが原因。人の体は気温が高くなると、体温が上がりすぎないように暑さを感じ、それに反応して汗をかき、気化熱で体温を下げます。急に気温が上がるとこの反応がすぐに起こらず、熱が体にこもってしまい熱中症を発症しやすくなります。若い人ならすぐに順応しますが、高齢者は慣れるまでにとても時間がかかるのです」

 夏本番というほどではない気温は油断しがちだが、それまでとの温度差に要注意だ。また体の中の水分(体液)の不足、いわゆる“脱水”も熱中症の要因だ。

「高齢者は次のような原因で脱水(体液不足)になりやすくなります」

◆加齢による体液の減少

「体重に対する体液の割合は小児80%、成人60%、高齢者は50%。ダム湖に例えれば若い人より貯水率が少ない状態。同じ環境で汗をかけば高齢者がいち早く脱水状態に」

◆食事・水分摂取量の減少

「排泄や汗、呼気などで体から出て行く水分を、食事や飲み物から補う必要がありますが、高齢者は食べられる量が減ります。本人が『しっかり食べた』と言っても絶対量は少ない場合が多く、その分、水分摂取量も少なくなります」

◆のどの渇きを感じにくい

「体が水分を必要とすると、自然に飲み物を手に取ろうとしますが、高齢になるとそのサインに気づきにくく積極的に水分摂取をしなくなります。また外出先や就寝前などは、頻尿の心配から意識的に水分を控えることもあります。

 このほか、高齢者は厚着を好む傾向があります。気温を感知しにくいこともあり、季節に合わない長袖の衣類を着続けていたり、防犯のために家の開口部を閉め切り、エアコンも使わずに(操作できない場合も)いたりします。独居の場合は特に家の中も熱中症リスクが高いのです」

 熱中症の引き金になる体液不足。では、体液とはどんなものか。

「体液は、体温をちょうどよく維持する調節機能、栄養素や酸素の運搬、老廃物の排出など重要な働きがあります。そのため体液が不足すると、さまざまな異変が起こります」

 体の中でも体液の多い臓器には異変が出やすいという。

●脳:めまい、集中力低下、頭痛、けいれん、意識消失
●消化器:食欲低下、吐き気、下痢、便秘
●筋肉:筋肉痛、しびれ、麻痺、こむら返り

「これらは熱中症の第1段階。このほかわかりやすいのは大量発汗。拭いても拭いても止まらない汗が、やがて出なくなると体は危機的状況です。さらに脱水でめまいが起きると、転倒、骨折や誤嚥のリスクも重なります」

 熱中症は誰でも重篤になると命にもかかわる病気だが、特に高齢者は障害が残るような深刻な事態にも至るという。

「もともと貯水量が少なく、体内に余裕がありませんから、症状が出たときにはすでに危機的状況。ですから、日常的に水分補給を心掛けることに加え、症状が出る一歩前の“かくれ脱水”の段階から対策することが大切です」

“かくれ脱水”は図のような兆候(舌が乾き気味、爪を押すとすぐに赤みが戻らない、手が冷たい、皮膚をつまむとすぐに戻らない)から見つけることができる。高齢者本人が気づきにくいことを念頭に、家族や周囲が気をつけたい。

※女性セブン2018年7月12日号

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