いきおい外務省には不満が残る。2016年の伊勢志摩サミットにおける「今井ペーパー問題」や昨年、中国国家主席の習近平に宛てた「首相親書の書き換え」問題などは、外交ルートを無視した典型例かもしれない。
今井はサミットに参加した首脳に対し、「世界経済の現状がリーマンショック前夜に似ている」と予定外の経済指標データを示したが、その根拠が薄弱で物笑いのタネになった。
また、自民党幹事長の二階俊博訪中では、首相が習近平に宛てた「親書」を外務省が用意し、それを今井が書き換えて騒動になる。経団連の意向を受けたいきなりの中国寄りの政策転換とされ、対中政策に慎重だった外務省の反発を食らった。とりわけ国家安全保障局長の谷内の怒りはおさまらず、局長の辞任まで匂わす騒動に発展した。
いまや官房長官の菅と並ぶ官邸の最高権力者と評され、すっかり豪腕秘書官の評価が定着した今井は、得意のエネルギー政策でも外交手腕を発揮してきた。トルコや英国への原発輸出などがそれだ。
経産省出身の今井は、原発をはじめとしたエネルギー政策にはめっぽう詳しい。だが、外交は本来門外漢である。結果、原発の輸出計画はどちらも難航を極めている。これでは外務省から不平が漏れるのも、無理ないのである。
◆「外務省ルートは時代遅れ」
しかし、それでも豪腕秘書官は意に介さない。そしてここへ来て、北朝鮮外交にも乗り出している。