ビジネス

古い米国の木造住宅が売れる理由と日本の空き家問題の考察

老朽化が進む日本の空き家問題をどう解決していくか

「空き家問題」が深刻さを増す日本の不動産市場。人口減少に歯止めがかからないのに新築住宅は次々と着工されているのだから、空き家が増えるのも当然だ。そんな中、木造の古い輸入住宅が一部の投資家から注目を浴びているという。一体なぜなのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。

 * * *
 先日、とある有力なデベロッパーの仕入れ担当者と電話で雑談をした。市況のこと、土地の価格動向、建築費が高止まりしている等々、話題は尽きない。

 最後に彼がこういった。

「当社では最近アメリカの木造住宅を国内の投資家に販売しているのですが、これがすごくよく売れるのですよ」

「木造住宅……もしかして築22年以上の物件?」

「そうです。よくご存じで。ものすごく売れすぎているので、そのうち国税庁に目を付けられそうですけどね」

 なぜ、築22年以上の木造住宅が投資家に好まれるのか──。その理由は、この国ならではの税法上の仕組みにある。

 不動産を購入して賃貸運用などで利益を出した場合、日本では建物の価値は年々減じていくという考えに立ち、その減少分を経費として計上できることになっている。いわゆる「減価償却」という経費項目だ。

 鉄筋コンクリートなら46年、木造住宅なら22年が税法上の耐用年数。だから新築の木造住宅に投資した場合、その建物部分についての購入額を22年かけて経費として計上していく。しかし、これはあくまでも新築の場合である。

 築22年の木造住宅を購入して賃貸で収益を上げた場合はどうなるのか。この場合は、建物の使用価値が低いと見なされ、4年で減価償却出来ることになっている。

 アメリカの木造一戸建て住宅の価格は、大半が建物の価値だと評価される。1億円の邸宅を買った場合は、8千万分が建物ということが普通。ということは、購入から4年間は毎年2000万円を減価償却費として経費計上できる。

 その邸宅の利回りが10%だとすると、減価償却費だけで1000万円も赤字が出せる。その他に保険料や修繕費、業者への委託費なども経費計上できるから、場合によっては1500万円くらいの「赤字」が出る。この赤字を国内で上げたその他の不動産などの収益と合算すれば、利益を圧縮できる。その結果税金も安くなる、という仕組みだ。

 これが国内で築22年の木造住宅を購入した場合はどうなるのか。同じ1億円の物件でも、日本では土地が8000万円、建物が2000万円、というケースがほとんどだろう。そうすると4年での償却対象は毎年500万円。あまり節税効果がない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン