「極端なことを言えば、映画を観に来なくてもいいんです。ただここに来て、誰かと会って話してもらえたら、それだけで街中の映画館としての価値がある」(青山さん)

 実際、同館には地域の見守り活動の一面も持っている。

「いつも来ている誰々さんがいない。電話してみたら、足を大けがして動けない状態だった、とか、訪問したら体調を崩してひとりで苦しんでいた、とか。そういうのがわかるんです。虐待や両親の不和など、家に居づらい子供たちも来ます。何をするわけでもなくずっとロビーで過ごしているから、どうしたの?って聞くと、『家に帰りたくない』と。そんな子供たちに映画を観せると、人生が変わるほどの衝撃があったりするんです。以前、そうやってうちで映画を鑑賞して、『将来は映画の道に進みたい』という子供もいました」(青山さん)

 今後の展望は、この動きを全国に広げていくことだと青山さんは語る。

「例えば東京の世田谷区は今ミニシアターが1つしかありません。ここにミニシアターを新たに作るのではなく、公共施設をコミュニティーとして開放して、市民に向けた上映会を開くとか。行政と組んで公共上映を増やしていきたいですね。娯楽施設ではなく『福祉施設』へ。これこそが街中の映画館が生き残る唯一の道だと確信しています」

※女性セブン2018年8月2日号

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