芸能

綾野剛の『ハゲタカ』 なぜ今?の問いに答えられるか

綾野剛は大森南朋の出世作となった作品に挑む

 好スタートをきった作品が数字を保ち続けるとは限らないのが昨今のドラマの特徴でもある。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
「ドラマ」は時代を映します。その代表作の一つが、経済ドラマ『ハゲタカ』。ご存じの方も多いと思いますが、この作品、最初はNHKの土曜ドラマ(2007年)で放送されました。そしてこの夏、初回視聴率第2位と好発進した新バージョンの『ハゲタカ』(テレビ朝日系木曜午後9時)。

 綾野剛が演じる主役・鷲津政彦は、外資系ファンドの“ハゲタカ”。「伝説の”企業買収者”が腐った組織のトップを叩きのめし、痛快に日本企業を甦らせる!」(テレビ朝日リリース)というストーリー。

 でもなぜ今このドラマ? 「バルクセール」「血も涙も無い外資」なんて言われても、若い視聴者はピンとこないはず。ハゲタカは今、どの空に飛んでいる? 視聴者のとまどいに答えなければなりません。第1話、2話を見て、ドラマに描かれた90年代後半という時代と今との「ズレ」を痛感させられました。

 原作の小説『ハゲタカ』が描き出した舞台は、バブルが崩壊した日本。闇雲に融資しまくった結果、膨大な不良債権を抱えていた銀行。「腐った」組織の大手・三葉銀行の前に、突如現れた外資系の企業買収者・ハゲタカ。「日本企業はいったいどう料理されてしまうのか」と右往左往するエリートサラリーマンたち。

 最初にドラマが放送された2007年を振り返ると……バブル崩壊の混乱は収束しつつありましたが、その痛い記憶も風化しない中、今度はアメリカのサブプライムローン危機が膨らんでいた。つまり、戦後順調に成長してきた日本の経済も、もはや安泰はないという不安感、危機感が世を覆っていた。その中で放送されたNHK『ハゲタカ』の評判は、回を追うごとにぐんぐんと高まり、結果として映画にもなりました。

 その時、ハゲタカ・鷲津政彦を演じたのが大森南朋。今や大森さんは人気役者となりCMも出まくりで笑顔をふりまいていますが、当時はまだお茶の間に存在は浸透せず、むしろ不気味な存在だったと言ってもいいかもしれません。顔や名前を知っている人は限られ、舞踏家・麿赤兒の息子だとわかって見ていた人なんてよっぽどのアングラ通。そして、そのことが結果として、ドラマに緊張感を与えていた。

 いったいこの人は何者か。何をしでかすのか。つかめない人格、怖さ、違和感。鷲津が放っていた「異物感」が、外からやってきたハゲタカの質感と重なりあって不気味さが増幅されました。となると、今回鷲津を演じる綾野剛さんは重責でしょう。このドラマの中で、鷲津の存在は非常に大きい意味を持つからです。

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン