評論家の加藤周一さんが日本人の最大の特徴は、「今、ここに生きる」ということを言っているんです。「過去は水に流す」という日本のことわざがありますよね。過去に縛られないという意味です。そうすることによって、今という時間を豊かにするわけです。また、「明日は明日の風が吹く」という“未来”のことわざもあります。要するに、縛られている時間からの解放なんです。

 この小説の主人公・カンヤダは、「今、ここに生きる」人だった。ぼくなんか、「今、ここに生きる」を体現するのに、いろいろ悪戦苦闘したわけです。それこそ、座禅に行ったりとか。カンヤダは、最初からそれを持っていた。だから、ぼくは、カンヤダに惹かれたんです。

 宮崎駿も同じです。宮さんとは40年の付き合いになりますが、思い出話をしたことはほとんどない。話す内容は、いつも「今、ここ」です。宮さんとカンヤダの共通項は、「今、ここに生きる」を本能的に体現しているということにあるのかもしれない。ぼくは、宮さんのこともうらやましく思っています。

 だから、この『南の国のカンヤダ』のいちばんのテーマは、「あなたは時間に縛られていませんか? そこから自分をちょっと解放してあげませんか?」なんです。タイムマシーンという人類憧れの乗り物があります。あれは自分を解放するための夢のような気がするんですよ。『南の国のカンヤダ』でいえば、執筆中にぼく自身がタイムマシーンに乗って旅をしたし、みなさんには読むことで、その旅をしてほしいと思っています。

◇8月5日(日)には、東京・渋谷の大盛堂書店で出版記念トークショー&サイン会が開かれる。詳細は、http://taiseido.co.jp/event20180805.html。

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン