◆「特攻隊の恥さらしだ!」
5回目は出撃直後に米戦闘機の編隊と遭遇して低空に逃げた。6回目は敵の高射砲をかいくぐって爆弾を投下し、大型船を沈めてから1回目と同じミンダナオ島の飛行場に着陸した。
カローカン飛行場に戻る際、九九双軽の不調で深夜のマニラ郊外に不時着した。奇跡的に着陸は成功したが、機体頭部から地面に突っ込んだ衝撃で意識を失い、気づいたら周囲は真っ暗だった。フィリピン人ゲリラがいたら確実になぶり殺しにされたが、幸い日本軍の息のかかった地域で命拾いした。
この間、大本営は佐々木の特攻で敵の有力艦が大破炎上したと発表した。佐々木にとって2度目となる「戦死」の発表だった。
6度目の生還をはたした佐々木に向かって、猿渡大佐は「この臆病者! よく、のめのめと帰ってきたな。きさまのような卑怯未練な奴は、特攻隊の恥さらしだ!」と怒鳴りつけた。
だが何度罵られても心は折れなかった。この頃佐々木は、死んでいった万朶隊の仲間を偲び「佐々木は将校5名分の船を沈めるまでは、死なないつもりです」と同僚に打ち明けている。
7回目の出撃は離陸に失敗。8回目は命令によりたった一機で出撃し、敵輸送船団と艦船を発見したが、「200隻近い敵にただ一機で突っ込むことにどんな意味があるのか」との強烈な孤独感に襲われ、機首を旋回させて飛行場に戻った。