命中したかどうかわからないまま、反撃を怖れて直ちに現場を離れ、岩本隊長に教わった「緊急避難地」のミンダナオ島に着陸した。

 大本営は万朶隊の戦果を誇張して発表し、佐々木は戦艦を沈めて殉職した「軍神」として祭り上げられた。

 万朶隊の属する第四飛行師団参謀長の猿渡篤孝大佐は生きて基地に戻った佐々木に向かい、「どういうつもりで帰ってきたのか。死ぬのが怖くなったのか」と詰問した。

 2回目の出撃では掩護する僚機が見つからず、カローカン飛行場に帰還した。

 3回目は操縦席でエンジンを回そうとした瞬間、米艦載機が爆弾を投下した。機体の外に飛び出した佐々木は猛烈な爆風の中を必死に走って逃げた。この時、わずか3m離れた場にいた同僚の伍長が爆弾で吹っ飛んで戦死した。

 4回目の出撃前、作戦参謀から「必ず体当たりしろ」と命じられた佐々木は腹を据えてこう反論した。

「私は必中攻撃でも死ななくてもいいと思います。その代わり死ぬまで何度でも行って爆弾を命中させます」

 この出撃では、直掩隊の隊長が「わざわざ殺すことはない」と佐々木に同情し、飛行中に直掩機を引き返したため特攻を免れた。

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