理不尽な命令を出した人間が罪を問われず、その命令を受けた現場の人間が最も苦しむことは、現在も続く日本社会の宿痾である。
だが70年以上前に上官から特攻を命じられても信念と技術をもって背き、たったひとりで9回も帰ってきた21歳の青年の存在は希望そのものだ。僕たちは“不死身の特攻兵”を後世に語り継ぐ必要がある。
(文中敬称略)
※内容は鴻上氏が著作権継承者の許可を得たうえで高木俊朗『陸軍特別攻撃隊』上巻・下巻(文藝春秋)に準拠して記述した。
【PROFILE】1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1981年、劇団「第三舞台」を結成し、現在は、主にプロデュースユニット「KOKAMI@network」と若い俳優たちと共に創る「虚構の劇団」で作・演出を手掛ける。舞台公演の他、映画監督、小説家、エッセイストなどとしても幅広く活動。近著に『不死身の特攻兵』(講談社現代新書)、『青空に飛ぶ』(講談社刊)などがある。
■取材・構成/池田道大(フリーライター)
※SAPIO2018年7・8月号