南関東の某市から渋谷や新宿にやってきては、日がな一日サンプルを漁りまくる沢田さん(大学生・20代)。自宅に帰ってからは、ゲットしたサンプルをビニール袋に小分けして、メルカリなどのフリマアプリで販売している。フリマアプリを使えば何でも”カネになる”と話す。
「メルカリにハマって、最初は着なくなった服を、次に教科書や制服を……って感じで身の回りにあるモノを全部売っちゃったんですよね。売るモノがなくなったら、弟のゲームやパパやママの服まで売ってたし(笑)。“使用感ありの下着”だって、キモイ客に高値で売れるけど、さすがに良くないと思ったし、サンプル集めて売れば違法じゃないし、一日ショップを回れば一万くらいになるし」(沢田さん)
“違法じゃければ何を売ってもよい”というのが、沢田さんにとっての免罪符。価値のあるモノはカネになる、こう感じてからは、身の回りにある全てのものをフリマアプリでカネに換え、日々の生活費の足しにしてきたのだ。いや、生活費の足しと言えるレベルではない。沢田さんは実際に、月額5万円以上の収入を、フリマアプリを通じたサンプル品販売だけで得た実績もあるというのだから、もはや”仕事”だ。
「友達が最近やっているのは、香水のテスターを小瓶に集めて一本千円くらいで売るってやつ。香水って高いじゃないですか。お試しの香水瓶からシュッシュツってやって小瓶に集めて回るんですよ(笑)。すげー匂いがして店員に怪しまれまくるんですけど、別に違法じゃないし、怒られるまでやり続けるっていう(笑)。気合入ってるやつは、香水のテスター丸ごと持ち帰って”テスター”って書いてあるシールをはがして売る。超儲かるらしい」(沢田さん)
前述した通り、フリマアプリをめぐっては「盗品売買の温床」などと指摘される事もあるが、サンプル品の売買となれば”合法”なのか。沢田さんが言う通り「売れるものは何でもカネにする」といった姿勢も、ビジネスと言い切られてしまうと、説得力のある反論がすぐには思い浮かばない。しかし、その感覚は浅ましく、そして少なからず他人に迷惑をかけていると思うのだが……。
「そういうのウザくないですか? 森さん(筆者)と同い年くらいのママがいる友達は、一緒にサンプル集めやってお小遣い稼ぎして、ご飯食べたり、遊びに行ったりしてるし! むしろ、ウチらのほうが賢いと思う。なんだっけ? モウテンでしょ、盲点。人の思いつかないことをやるビジネス。儲かる仕事あったら他に教えてよ。若い子はカネねーから仕方なくね」(沢田さん)
筆者もカネは好きだ。いくらあっても足らない。あったらあっただけいい。沢田さんの言う通り、金になるモノはすべてカネに換え、ラーメン食べて酒飲んで、キャバクラに行って人生を謳歌したい。しかし、自販機のおつりを漁って歩きまわるようなことは、例えカネになるとしてもやりたくないし、非効率だし、何よりスキルにも経験にもならない……と思うのだが、彼女たちにはそうした理屈が全く伝わらないようだ。